ヒツジと狼スピンオフ #tokyo-revengers (ページ1)

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となり① ページ1

中学生のときのはなし

はじめての「部活」というものに憧れて
想像していたものとはぜんぜん違う

嫌で、面倒で、サボりたい

でも夢中だった

「…いつまで泣いてんだよ」

最後の大会
引退

負け

人生っていうと人は大げさだというけれど
私の人生にとって、こんなに悔しい気持ちを抱いたのははじめてだった。

大会会場の外、入り口とは真反対の静かな場所
解散したあと、周りには嘘をついて一人そこへ向かって

膝を抱えて、泣いた。

「…」

肩に当たる温度
隣にしゃがみこんだ勢いで、ふわりと香る匂い

「……きてたの」

「来いっつったのお前だろ」

「……めんどくさいって」

「気が変わった」

「どれだけ気分屋なの…」

「いまさら」

鼻声の私のとなり

「…気ィ済んだら帰んぞ」

ぐるぐると、頭の中には顧問の言葉があった
というのも、文句を言いたかったからだ

「この経験は将来、お前たちの役に立つ」
なんてありきたりなセリフなんだろう、ってがっかりした

そんな話をしているんじゃない

悔しくて悲しくて、将来どころか明日すら考えられないくらい
精一杯の「今」の話をしてほしかったのに

「…春千夜にはわかんない…」

「…んなの当たり前だろ。俺はお前じゃねぇ」

「…うん」

たかが中学生の部活だって、大人は言うんだろう

「……みんな帰ったかな」

「知らね」

「…」

「…一人じゃねぇと泣けねぇからここに来たんじゃねぇの」

「…ん」

「俺はいーのかよ」

「…毎回それ聞くよね、わかってるくせに」

「あ？」

「…いーよ。春千夜だから」

「…あっそ」

ぐるぐる渦巻いていた感情が、ゆっくりと穏やかな海みたいに
静かにだけどぎこちなく、波が静まっていくのを感じる

抱えた膝にのせていたおでこ

春千夜のほうをそっと向けば、頬杖をついてどこか遠くをみていた

「…いつからみてたの」

「ぜんぶ」

「朝からきてたってこと？気づかなかった」

春千夜が、視線を向ける

「…ずっと」

「？ずっとってお弁当食べてた時も？」

「バカじゃねぇの」

「は？」

頬杖をついていた手を、私とおんなじように
膝の上で組んだそれの上に、視線を合わせたままの頭がのる