38.花に嵐 ページ40
「おい、悟。
私は全く話の脈柄が見えなかったんだが」
霜宮碧と別れて五条と夏油は男子寮の部屋に戻る。
五条は不機嫌さを隠しもしなく、夏油はただただ困惑を露わにしていた。
「ちっ、あの野郎。
上から縛りを受けやがってる」
「ッ!!」
なんの縛りと言わずも、その一言で夏油は察した。
別に、仲間の死をきっかけに呪術師界隈から離れる人は決して少なくない。
強制でやれるほどこの世界は甘くないし、そういう者から死んでいくからだ。
高専だって、卒業したら呪術師として働く事を約束されているわけじゃない。
五年生のうちの最後の一年間は、【術師】として生きるか【一般人】として生きるか選択するための一年だ。
だから、五条は言った。
【逃げればいい】
けれどきっと彼女は【縛り】を受けている。
呪術師を辞められない、縛りを。
確かに結界師は貴重な人材だ。封印師もさらに貴重な人材だ。けれど、そこまで必死に繋ぎ止めようとする物だろうか。
「アイツはどう見たって、呪術師の適性はない。
一族で呪術師なのが疑うくらい、真っ当な奴だ。
そんな奴が、続けても壊れるだけだろ」
「引き止めるだけの理由が??」
「それは別にどうだっていいんだよ。
………問題は、オレたちが引き合いに出された事だ」
「は!?」
思わず言葉を失う。
つまり、あれか??
オレたちが、人質にされたということか。
【大切な人が死んでも、手足が千切れても、この術式が私の体に刻まれている限り。
わたしは、この世界から逃げない】
【与えられたんじゃない。
自分で臨み選び取った道だ】
それでも、自ら選んだと言うAに五条は憤った。
「逃げられない」んじゃない。「選んだんだ」と、その選択を肯定する。
その選択はウソだ。
それでもその選択を言わないのは五条たちを庇っているから。
選んでなんていない。
道は最初っから一本道だった。
全てを言わないのは霜宮Aが真っ当だから。
善人で他人の心を尊重できるただの人だから。
「上が俺たちを出汁にどんな脅しを仕掛けたのかしらねぇけど、、、くそっ。ムカつく」
ドンっと力ずくに壁を叩く。
じわっと広がる痛みは、感情を覆って一瞬だけ思考をクリアにする。
「……消子には言わない方がいいよな」
「あぁ……」
心の底から呪詛を吐く。
「くっそ。辞めてしまえばいいんだ」
こんな腐った世界に
彼女がいるのが許せなかった。
-
699人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かるうら(プロフ) - 50話分しかなかったはずなのに、今までにないくらいの重量感で恐れ入りました。なんだか第5章くらいまで読んだ気分です。2章に行って参ります! (2020年8月3日 21時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
サイコロ - 最の高だ…推しが絡んでる… (2020年3月19日 16時) (レス) id: d3e3d1ba1a (このIDを非表示/違反報告)
さとう - とても面白いです!応援してます! (2020年3月9日 19時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 吉田さん» いいえ!神様は芥見下々先生です!!!でも、そう思ってくださり嬉しいです (2020年3月6日 22時) (レス) id: b5f5114d16 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - 作者様は神でしょうか?( ˘ω˘ ) スヤァ… (2020年3月5日 1時) (レス) id: fb4495920c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:朱鷺 | 作成日時:2020年1月19日 23時