Prologue 0 ページ1
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ずっと、ずっと。
ずっと後悔している。
わたしが信愛する五条悟という男と初めて出会ったのは、たしかわたしが高専2年で彼が1年の頃だっただろうか。
朧げな記憶。
断片的に残るわだかまり。
決して癒えない見えない傷。
後悔と残穢。
無限と虚は等価値なのか。
無限の最果てに待つのは、虚の底では無いのか。
どちらもあるはずがない数字たち。
無限の術式をもつ五条悟と、
虚の術式をもつ霜宮A。
無限には何がなくて、
虚には何があるのだろうか。
無窮の焉りをずっと探していた。
その場所は、
あまりにも孤独だと知っていたからだ。
―
――
―
都心からかなり離れた田舎の山中。
村の人たちも滅多に踏み込まないその渓谷にはかつてひとつの村があった。
山の間を通る川を中心に栄、そして現代には残ることのできなかった村だ。
戦時中に消滅したと言われているが、その実際は知られていない。
ただ、その村には人身御供の風習があると周囲の農村からは恐れられていた。
まるで酸に溶かされたようにその呪霊のからだは腐敗し焼け爛れていた。
皮膚から香る鼻につく醜悪な匂いも、
死際に出したような悲痛な声も、
生者にすがりつこうとするその姿勢も、
見るに耐えないぐらい悍しい。
伸ばされた、溶けて原形の取れない手を紙一重でかわした。
その先にあった大きな岩は、じゅぅぅうと音を立てて溶けていく。
避けられなかったらと思うと体が震えた。
それでも、構えは崩さない。
手に持っている刀を強く握る。
たぶん、呪力で覆っていればあの呪霊に触れても溶けないはずだ。
「……」
それでも踏み込めないのは、呪霊が酸を撒き散らしながらも俊敏に動くからだ。
ふっと細く息を吐く。
躊躇ったら負ける。
ならば、ギリギリまで引き付けて、叩き斬る。
『くらい、、、くらい、、、あかりりりり、ねね、あかりらりちょうだぃ?』
「……虚構呪術、《第一深度》」
一瞬にして、距離を積められた。
それでも避けない。呪霊が懐にはいるまで、惹きつける。
左足を引いた。
両手で大きく振りかぶる。
そして、結界に入った瞬間振り下ろした。
「あ”ぁ?あ”ァあぁ」
「えっ?!」
ぐちゃりと腐敗した肉が飛び散った。
けれど、それで終わらずその肉は足場の川辺の砂利までも溶かし始めた。
浮いた体。
(おち、、る)
「なーに、心中しようとしちゃってんの?」
偽物の夜に、そんな呑気な声が響いた。
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かるうら(プロフ) - 50話分しかなかったはずなのに、今までにないくらいの重量感で恐れ入りました。なんだか第5章くらいまで読んだ気分です。2章に行って参ります! (2020年8月3日 21時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
サイコロ - 最の高だ…推しが絡んでる… (2020年3月19日 16時) (レス) id: d3e3d1ba1a (このIDを非表示/違反報告)
さとう - とても面白いです!応援してます! (2020年3月9日 19時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 吉田さん» いいえ!神様は芥見下々先生です!!!でも、そう思ってくださり嬉しいです (2020年3月6日 22時) (レス) id: b5f5114d16 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - 作者様は神でしょうか?( ˘ω˘ ) スヤァ… (2020年3月5日 1時) (レス) id: fb4495920c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱鷺 | 作成日時:2020年1月19日 23時