Prologue1 ページ2
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もう一度、目を開けたらそこは本物の星空が広がっていた。
広大な空、光年の先にある星々。
ふと影が落ちて、目の前には端正につくられた顔が覗く。
膝裏にかかる手と、背中から腰にまわされた手によってどうやら抱えられていたらしかった。
「一級一体にやられるとかAは弱いなぁ」
「うるさい。もともとは五条の任務でしょ。私に押し付けておいて文句言わないでよ」
身をよじって五条から降りようとすると、落ちるよと言われて下を見た。
そこは高い空の上で身震いをすら。
それにくつくつと五条はわらってふるふると震えた。
川辺に降り立つと、そっと地面に下ろしてくれる。
さぁ帰ろうと川辺を降り始めると五条に腕を引かれて止められた。
ここ、と言われて腕を見ると手首から肘にかけて少し酸で焼けている。
「いつの間にやったんだろ」
「Aって昔っからそういうところあるよね。痛みに鈍いところ?
ほら、見せて」
私が腰に巻いていたポーチから軟膏と包帯をするりと抜き取って怪我した腕を引く。
車についてからでいいよと言うけれど頑なに許さなかった。
態度と言葉とは裏腹に、爛れた腕に軟膏を塗るその手は優しく細やかだ。
白い睫毛が伏せられ、慣れた手つきで包帯が巻かれていった。
「ありがとう」
「お礼言うんなら、あんな雑魚に傷つけられないぐらい強くなってよ」
「いやいや。この任務五条に回ってきた任務だから雑魚なわけないじゃん。私まだ15歳ぐらいだし」
「雑魚だよ。人身御供の思想からできた呪霊だからって上層部がビビっただけで、高く見積もっても準一級レベルの雑魚」
こんな山奥まで来たのにさぁ。マジで無駄足、時間の無駄。
不機嫌そうに鼻を鳴らす五条に顔をしかめた。
「昔の五条はもっと可愛げがあったのになぁ。どうしてこうなったんだろ」
「……はぁ?僕、丸くなったって一部から評判だったんだけど??」
「まだ高専の五条の方が素直で可愛かったよ。あの頃は素直に喜んで、素直に怒ってくれたもん」
「………」
「A先輩、A先輩ってさ。なのに目が覚めたら、僕なんていってて、、、大人になったのかなぁ」
前を歩いていた私が振り返ると、五条は俯いて立ち止まっていた。
サングラスの奥に見える空の瞳は、歪んでいる。
「本当なら、今頃私も大人だったのにね」
本当は、申し訳なく思っていた。
もう、わたしはこの人から望まれるものを返すことはできない。
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かるうら(プロフ) - 50話分しかなかったはずなのに、今までにないくらいの重量感で恐れ入りました。なんだか第5章くらいまで読んだ気分です。2章に行って参ります! (2020年8月3日 21時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
サイコロ - 最の高だ…推しが絡んでる… (2020年3月19日 16時) (レス) id: d3e3d1ba1a (このIDを非表示/違反報告)
さとう - とても面白いです!応援してます! (2020年3月9日 19時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 吉田さん» いいえ!神様は芥見下々先生です!!!でも、そう思ってくださり嬉しいです (2020年3月6日 22時) (レス) id: b5f5114d16 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - 作者様は神でしょうか?( ˘ω˘ ) スヤァ… (2020年3月5日 1時) (レス) id: fb4495920c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱鷺 | 作成日時:2020年1月19日 23時