33.さよならだけが人生だ ページ35
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冬は嫌い。
いつもいつも、私から大切なものを奪っていく。
硝子ちゃんとお買い物に出かけた。
傑とお気に入りの本の作者の話をした。
悟と一緒にボロボロの映画館のB級映画を観に行った。
彼らにあってから、なぜか私は幸せだった。
満ち足りた日々。
平等に流れる時間。
まるで、ぬるま湯に揺蕩う漂流船だ。
2年になってからたびたび入るようになった、海外任務に出ていた。
先輩のように長期ではいかない。
慣らすような短期の海外任務。
他人の想いから生まれる呪霊は、その性質上国内と国外では大きく変わってくる。
他人の思想は、万国で違うからだ。
慣れない戦いに苦戦を強いられて、少しボロボロになりながらも日本に帰った。
真っ直ぐに高専に帰ってきて、報告と、みんなにお土産を渡そうとした時、事務員からその訃報が知らされた。
「、、、え??」
同期の、訃報だった。
馬鹿だけど明るいやつだった。
満年3級の弱いくせに、仲間想いなやつだった。
呪術師のくせに、
人一倍命の重さを知っているやつだった。
脳みそが理解する前に、目から涙が溢れた。
まだ、事務員さんがなにかいってる。
それでも、ぐちゃぐちゃの頭ではなにも入ってこない。脳裏で流れるのは、彼と過ごした暖かな時間だけ。
「五条くんがね、仇を取ってくれたの」
かろうじてその言葉だけは拾えた。
持っていたものを全て置いていって、私は走っていた。
はしって、どこにいくのだろうか。
わかんないけど、足が動く。
浮かぶのは、優しい同期の顔と、救えなかった悟の顔。
わたしは、言わなくちゃいけない。
かれに、つたえないといけない。
走り回って、息が切れて、
涙で息切れで顔がぐちゃぐちゃになったころ、やっと演習場に一人でいる悟を見つけた。
「っ、、、さとる!!」
走った勢いのまま、近づいて、俯く五条のサングラスを引っ剥がして、顎を掴んで無理やり目を合わせた。
「ありがとう、、
あいつを弔ってくれてありがとう」
うまく笑えてるかもわからない。
でも、見開かれた悟の目には生気が宿る。
すぐにドンっと突き放して、、背を向けて何処かへと走り出す。
悟が我に帰って、霜宮碧を探したときにはもう呪力の残穢すらなかった。
それから彼女は姿を消した。
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かるうら(プロフ) - 50話分しかなかったはずなのに、今までにないくらいの重量感で恐れ入りました。なんだか第5章くらいまで読んだ気分です。2章に行って参ります! (2020年8月3日 21時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
サイコロ - 最の高だ…推しが絡んでる… (2020年3月19日 16時) (レス) id: d3e3d1ba1a (このIDを非表示/違反報告)
さとう - とても面白いです!応援してます! (2020年3月9日 19時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 吉田さん» いいえ!神様は芥見下々先生です!!!でも、そう思ってくださり嬉しいです (2020年3月6日 22時) (レス) id: b5f5114d16 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - 作者様は神でしょうか?( ˘ω˘ ) スヤァ… (2020年3月5日 1時) (レス) id: fb4495920c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱鷺 | 作成日時:2020年1月19日 23時