【ワートリ】最後まで、護り抜く。

『迅 悠一』 ページ7

「……迅、入るよ」

返事はない。
きっと寝てるんだ、と見当をつけて、私は迅の部屋へ入った。

眠っている迅の表情は穏やかで、少し安心した。
私はベッドの空いた場所に潜り込む。
すると、迅の腕が私をぎゅっと抱きしめた。

この行動、完全なる無意識である。

私と迅は小さい頃からよく一緒に眠っていて、その時に私をぎゅっと抱きしめていた時の癖がついてしまったらしい。

こうなると中々離れられないので、大人しく抱きしめられて寝るしかない。翌朝迅が先に起きて状況を理解して全力で恥ずかしがるまでがワンセットだ。

＿＿＿＿＿＿

＿＿＿＿

＿＿

「……っあああ！？」

朝起きたら目の前で見知った銀髪女子高生が2個ほどボタンの外れたパジャマ姿で寝てた。しかもおれは彼女を抱きしめてた。

この状況だけ見たら完全にアウト。どう足掻いてもアウト。セウトにすらならない。

ってかおれ昨日どうやって部屋に戻ってきたっけ！？

「……ん、おはよ」
「お、おはよう」
「昨日の記憶ないの？」

じっと見上げてくる視線。

「悪ぃ……マジで記憶飛んでる」
「え、昨日あれだけ痛い思いさせといて記憶ないの？」

痛い思い！？まさかDVでもやらかしたかおれ！？

「ま、覚えてないならいいけど……」
「よくない！！絶っっっっ対よくない！！」

おれ自身が理解してないままで納得されるのはよくない！！

「昨日、寝不足な上に嫌な未来を視たから私に甘えてたよね」
「あっ……」

全部思い出したわ。

「ごめん……ほんとごめん……」
「いいよ、私ぐらいにしか甘えられないんでしょ」
「う、はい……」

ぽんぽんと背中を軽く叩かれて、おれは二度寝することにした。

『弓手町駅』→←『駆除作戦』

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す