☆9ページ☆ 桜下と炳五【桜の森の満開の下編】 ページ11
気がつくと、私は麓にチラッと村が見える山の桜の木の下に座り込んでいた。
私は驚いた。
又もや、私の姿が変化していたからだ。
顔は変わらないが、髪は桃の長髪。
そして、其れに映える様な紅色の簪。
服は何時も着ている制服ではなく、桃色をベースにした着物と緑色のストール。
その姿はまるで、桜の精霊を思わせた。
まあ、実際その通りだった。
私はこの鈴鹿峠に生えたまだ若い桜の化身。
春、桜咲く季節のみ現れ、ただジッと、次の季節待っている。
そう、私の中で誰かがそう教えてくれた気がした。
だけど、その生活はとても寂しい。
そんな日々を過ごしていた、ある日の事だった。
『はるがきた はるがきた どこにきた
やまにきた さとにきた のにもきた
はながさく はながさく どこにさく
やまにさく さとにさく のにもさく』
「綺麗な歌声だな。」
『！だ、だれ？』
草花の影から現れたのは、黒髪に癖っ毛で、青い綺麗な瞳が特徴的な男だった。
「俺はこの辺りを根城にしているもんだ。
お前は…何だ？」
『そうなの？山に住む方にしては随分とうら若い様だけど…』
「問いに答えろ、お前はなんだ？」
『(ここで本名を教えることは危険ね)
そうね、私の事は桜下［オウカ］と呼びなさい。
では、私は貴方を何と呼ぼうか？』
「呼ぶ？誰が？」
『おかしな事を…勿論、私の目の前にいる"貴方"のことよ。』
Aの言葉に動揺したのか、彼の瞳が揺れたのを感じた。
其れを感じたAは…
『怖がらないで。』
「怖がる？この俺が何を怖がる？」
『あら、無知とは罪なことね。
でも、貴方にはまだ知る機会がある。
其れもまた人間である証ということかしらね。』
「……そうか、だから俺は…なら、俺の事は炳五と…呼んで…くれないか。」
私は彼から出た発言に目を見開いた。
だって…その名は…彼の真の名前だったから。
なら、私は…この言葉を贈りましょう。
『恐れないで、孤独を堕ちる事を…大丈夫よ、貴方は偉大な"落伍者"になる人なんだから。』
「そうか….なんか、分からんが…とても胸が暖かくなった。」
『そう、なら、良かったわ。
私の存在が貴方の生きる糧となったのなら、私は嬉しいわ。』
いずれ訪れる孤独な死を迎える彼に…この言葉が届く事を願うばかりだ。
「なぁ、桜下…」
『ん？何かしら？』
「お前…俺の…いや、なんでもない。」
『ふふ、おかしな人ね、炳五は。』
その事に対し、私はただ苦笑するしか、出来なかった。
☆10ページ☆ 右翼 【桜の森の満開の下編】→←☆8ページ☆ 桜の下にて何思う？【桜の森の満開の下編】
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なのは(プロフ) - 更新楽しみです！ (2020年7月3日 3時) (
レス) id: 122a982782 (このIDを非表示/違反報告)
空夜☆時音(プロフ) - 夢さん» ありがとうございます！pixivとこの作品は重なる様に書いて居ますので好みによって違うかも知れません。これからもよろしくお願いします！ (2020年5月25日 15時) (レス) id: b7a01024a7 (このIDを非表示/違反報告)
夢 - pixivでも見てます！更新頑張ってください！（私も小説頑張ります） (2020年5月25日 14時) (レス) id: ed90ac981f (このIDを非表示/違反報告)
夢 - がんばれがんばれ(語彙力) (2020年5月25日 10時) (レス) id: ed90ac981f (このIDを非表示/違反報告)
べっこうあめ - 初コメ失礼します! めっちゃ面白いです！作ってくれてありがとうございますm(_ _)m (2020年5月21日 8時) (レス) id: 036a34d0ed (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：空夜☆時音 | 作成日時：2020年4月18日 3時
