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中〜夢主ちゃん、海に行く〜5 ページ48

彼は守り刀だ。

だから、私があの時……政府が私を連行する際に手出しができなかったことを未だに引きずっているのだろう。


彼になんて声をかければいいのか分からず、私は口を噤んでしまう。



『それで?大将は一体何を頼んでいたんだ?』


『え?…』


『盗み聞きするつもりはなかったんだが…。…"海"がどうのこうのって言ってただろ?

大将はあの近日開くっていう海水浴のいべんととやらにするのか?』


『あ…そういえば、海水浴の催しでなんかやるとかあった気が…』


海開きにかわりないのでそっちには全く目にいかず、
ただ海に行きたいが一人で行くとかなり恥をかきそうで……そんな催しよりどうやったら長義が来てくれるのかを真っ先に考えていた。



『ああ、今の審神者が騒いでたから覚えていてな。
…何やらびーちばれーとか、こんてすととかあるらしいぜ?』


『騒いでたって…今の審神者さん、お祭りとか好きな人なの?』


『さあ、……あんまりあいつと話はしないから、どうなんだろうな。』


『…そう。』



まあ、私が彼らの仮の審神者になっていた時の頃も刀を向けることはあっても全く話そうとしなかった。

今薬研と話していること自体当初の私にとっては驚きでしかないだろう。


『それはそうと、海に行くんだな。』


『ええっと、そのことなんだけど辞めようと思ってる…っていうか。』

薬研に苦笑いでいえば、子供らしいきょとんとした顔で私に聞いてきた。


『その日、何か用でもあるのか?』


『あ、いや、……別に特に理由なんてないわよ。』




長義は嫌がっている上にしかも彼のいう迷惑がたった今起きたわけで、
海なんかに行った日には本当にそういう目に合わせてしまいそうだと怖気付いた_


__というのは口が裂けても悪気なく彼に襲った人に言えるわけがない。




『じゃあ、…その、なんだ。……俺と一緒に来てくれないか?

実は審神者に頼んで連れて行ってもらうつもりだったんでな。審神者も俺には興味はないから一人で動くだろうし、大将がいてくれると俺っちも楽しめるってもんだ。


…それに大将のことだろうから、独りだとか自分の知らない慣習を気にしてんだろうけど、俺が傍についてる。そんなヘマはさせねーよ。』



『薬研…!!』


『俺でよければ大将のそばで守らせてくれ。』


にっと笑って私の頭をぽんぽんと撫でた。

身長差があるし相手が子供だけど、自分を気遣ってくれる言葉がじわじわと胸を暖かくしていった。

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作者名:沙恵燬 | 作成日時:2019年2月1日 1時

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