やっぱりただの迷子に審神者は務まらない！【刀剣乱舞】 (ページ8)

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中～夢主ちゃん、海に行く～10 ページ8

目の前にから深いため息をつく声が聞こえる。

「守るも何も散々お前を守ってきただろう。…これからひとつ増えたことで大差はないよ」
少し私を下に見ているような発言に聞こえるが、事実助けられた機会は数えきれなかった。

どんな時も冷静沈着でいられ、的確な判断を取って行動することができる。

彼のその慧眼には脱帽しかできまい。

「だからもうそろそろ俺に褒美を寄越してくれてもいいだろう？」

「ほ、ほうび？」

思ってもみない言葉に驚いていて瞼を開けようとすれば長義が「もう少しだけ待って欲しい」といつもなら絶対に発言しない驚愕の言葉が口にした。
仕方なく彼の意に沿って瞼を閉じる。

「ほ、褒美をよこせって…ま、まさか！私の貯金を全てかっさら、んむ！？」

何も見えない真っ暗な視界で、何かで口が塞がった。

＿そう…それはとても柔らかな何かで、息をするのを忘れてしまった。

すぐに口から何かが離れていく。
恐る恐る目を開けるとそこには長義がじっと見ていただけだった。

思わず口を手で隠してじっと見てしまう。
「キ、キス…？」

「…」

いつもなら反撃できるのに今はできなかった。足に力が入らず座り込んでしまう。

「…何を言っている。"見ていなかったんだろう？"」
「っ！」

長義のいいたいことがわかった。
それが彼の求めた"褒美"なのかもしれないと思うと合点がいく。

「……悪かった」
座り込んだ私を前に砂浜に膝をついてぽつりと呟いた。

「…何もしてないんでしょ。謝んないでよ」

「…ん、謝ってないが？」

「えぇ…」

「……」

「…っ、何？」

私が珍しくじっと見てくる彼の目線に耐えきれずに顔を背けると、クスリと彼が笑っている。

「ちょっと？！」

「…なんでもないよ。立てるかな？」

「っ！長義、避けて！」
「！…っ分かっている。お前は引っ込め！！」
「嫌よ！」

彼が私に手を伸ばした瞬間……刃物が見えたために、彼に避けさせ、パレオに下に隠していたダガーナイフで応戦した。
長義はというと、瞬時に持っていた長いものから上手いこと刀を取り出して気づけばその人物の背後から首元に刃を向けている。

「っ！」

「薬研！？」
綺麗な黒髪、透き通る紫の瞳、俗にいう海パン姿とはいえその凛々しい少年は間違いなく薬研藤四郎だった。

「さあ、どういうつもりか教えてもらおうかな」

ドスの効いた声で笑う長義が久々に怖いと思った。