ブラックお嬢様のブラックな本丸事情【刀剣乱舞】

伍─三日月宗近─ ページ6

・


「失礼致します」

こんのすけの声と共に襖が開く。話に聞かされた通り、そこにいたのは1人の女。

やれやれ、最後の最後まで女か。まぁ、ここまで来てしまえば性別なんて些細な事。

これで最後。手早く粗を探し終わらせたいものだ。

そこでふと、女審神者の傍に置いてある竹刀に目がいく。人間で、剣を振る女など、少なくとも俺は今まで見た覚えはない。少しだけ興味がそそられ、開く気はなかった口を開く。

「顔を上げろ、審神者。名は何という」

ゆっくりと顔を上げる彼女と、視線が交わる。
すると目の前に差し出される1枚の紙。予め書いてあったようだ。

『私はA。
予め知っておいてもらいたいのは、私は喋れないんじゃなく、喋らないんだ。

そして悪いがここが何処で、なぜ私がここにいるのかも一切分からない。

私を怪しむ気持ちは当事者ながら大いにわかるが、詳しいことはそこのこんのすけ？に聞いてくれ』

成程、綺麗な字だな。語調がやや残念だが、それは些細な事。にしても響きからの推測だがもしやA、とは真名か···?

そんな初歩的な知識もなくこんな所へ、可哀想に……まぁ、この『可哀想』とはあくまで表面的な同情に過ぎず、これにより何が変わる訳でもない。
予定通り、俺たちが先程決めたことを事務的に報告する。

「三日月宗近だ。それで、Aとやら。

ここに身を置くのは良いが、ここは俺達の本丸だ。したがって、いくつか条件がある。

一つ、俺たちに干渉しないこと。

一つ、この本丸内は昼のみ、自由に行動を許可するが。

一つ、絶対に1人で行動しないこと。

これらは俺達だけではなく、互いの為のことだ。己の身が大切なら、遵守することを推奨する。

それから、この本丸内では常に長谷部と行動しろ。

おい、長谷部」

目をそちらへやり、ちらりと目配せをする。

陸→←肆

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す