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「じゃあ、行きましょ。早くしなきゃ、ジンがコナン君を虐めてるかもしれないわ」
「拳銃でも取りだして、か?」
「迷子の子猫をからかって、よ」
「それは面白い…いや、危ないな。早く止めに行かないと」
「ええ、だから急ぎましょ。二人が殺し合いになる前に」
欠片も思っていない冗談を互いに口にしながら、手を握りあった俺たちは顔を見合せて思わず笑う。
今日別れたら、またしばらく俺たちは会えなくなるだろう。次にこうして笑い合えるのはいつになるか、そもそもそんな日が来るのかさえもわからない。
それでも、俺が望めばいつでも会えた頃───彼女が組織に囚われていたあの頃よりも、会えなくなってしまった今の状況の方が、ずっと良かった。
「いい笑顔だわ、A。あなたもちゃんと幸せなのね」
「もちろん、ジンがいてくれるからな。志保ちゃんこそ、いい表情してる」
「ええ、だって皆がいてくれるもの!」
よくぞ聞いてくれたわねと言わんばかりの勢いで答えた志保ちゃんが、ギュッと俺の手を握りしめて笑う。彼女の言う “みんな” の中にはきっと、俺のことも含まれているのだろう。
今や、志保ちゃんのことを気にかけているのは、俺と明美さんだけではなくなった。たくさんの人が…とはまだ言い難いけれど、正体を知った上で守ろうとしている人もいる。
だから、もう大丈夫。
たとえ俺やジンがいなくなってしまっても、彼女は彼女の友人たちと共に、きっと上手く生きていけるはずだ。
扉を開けながらちらりと横目で確認した灰皿の中身はもう、とうに燃え尽きて綺麗な灰になっていた。
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櫂渦【とーか】(プロフ) - マリアンヌさん» マリアンヌさま、はじめまして。最高の褒め言葉をありがとうございます!マイペースではありますが、これからもお楽しみいただけるよう尽力して参りますので、どうぞ宜しくお願いいたします。 (3月31日 20時) (レス) id: 7ff0039a36 (このIDを非表示/違反報告)
マリアンヌ(プロフ) - はじめまして。名探偵コナンの知識はほぼ持っていないのに読み始め、気づいたら虜になっていました。櫂渦さん、文才がありすぎて有名な小説家の方なのかなと本気で考えています。本でもこの物語を読みたいくらいに大好きです。これからも楽しみにしています。 (3月30日 15時) (レス) @page14 id: 1f5a49a19a (このIDを非表示/違反報告)
櫂渦【とーか】(プロフ) - ありがとうございます。確認してまいります。 (3月10日 21時) (レス) id: 7ff0039a36 (このIDを非表示/違反報告)
あやなみ(プロフ) - 櫂渦【とーか】さん» んーとあのとーかさんのボードに返事送ったのでそこで会話するんです。通知来てると思うのでご確認お願い致します。返事待ってます。とーかさん! (3月8日 18時) (レス) id: 861062e758 (このIDを非表示/違反報告)
櫂渦【とーか】(プロフ) - あやなみさん» こんにちは。応援ありがとうございます!一緒に会話をするというのは、こうしてコメント欄でお話をするという意味でしょうか…? (3月8日 17時) (レス) id: 7ff0039a36 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫂渦【とーか】 | 作者ホームページ:https://www.pixiv.net/users/28997649
作成日時:2024年3月6日 14時