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ベルモットに依存すると決めた俺は、ボスではなく彼女だけに忠誠を尽くしているから、一部の人間からはよく思われていなかった自覚はある。
俺を上手く利用してベルモットに取り入ろうとか、人質にして強請ってやろうとか、そういうゴタゴタに巻き込まれることもあった。
ジンとベルモットは仲がいいのか悪いのかよくわからない関係だったから、今回もまぁそういった嫌がらせの類かと思ったのだが、本人曰く、違うらしい。
「あ、ベルモットは無事か？」
「さっき病院に突っ込んできたところだ」
つまり、無事。なるほど。
ところで俺の最後の記憶が正しければ、俺は自害しようとしたところでFBIに邪魔をされて意識を落としたはずなんだが、何がどうなって今に至るのだろうか。
取り敢えず、ベルモットに捨てられたことは間違いないはずだから、さっさと次の依存先を探すか、死ぬか、もしくはまだ捨てられていないなら彼女の元へ帰りたい。
「ペラペラ喋るな、煩ぇ」
「…声に出てたか、すまん」
麻酔のせいでまだ頭がぼんやりしているのか、或いは依存できるものを失ってしまった不安定な心のせいか、どうも身体の制御が上手くできなくなっているらしい。普段通りに振舞おうとすればするほど、勝手に指先は動くし、瞬きの回数は増えるし、息は荒くなる。まるでクスリの禁断症状だ。
「落ち着け。ベルモットの所にはもう返せねぇが、次の依存先を選ぶか、死ぬかは自分で決めさせてやる」
「まさか、今回の件であの女(ひと)がボスに叱られでもしたか」
「自由にさせすぎたとは言われたようだが、地位が揺らぐほどの罰は受けちゃいねぇよ。返せないのは、こっちの事情だ」
こっち、とは。
ベルモットが変わらず組織において立場を保っているというのなら、それはつまり、組織でない側の事情、ということになる。
まさかとは思ったが、そうやって悩んでいる俺の姿を見たジンが愉しそうに笑っていることに気づいてしまえばもう、それが正しい答えなのだと察さずにはいられなかった。
驚きのあまり、いつの間にか禁断症状がピタリと止まっていることに気づくことすらできない。
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作者名：櫂渦【とーか】
| 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/28997649
作成日時：2023年5月28日 23時
