1035. 全責任。 ページ36
[-カルバドス’s side-]
「…起きたか、カルバドス」
目覚めた俺の視界にまず入ってきたのは、真っ白なバスタオルでわしゃわしゃと髪の毛を拭きながらこちらを見ているジンの姿。下には灰色のスウェットを履いているが、上半身は裸のままだ。
組織で長年過ごしてきたが、いつ見ても常に黒ずくめなジンの、初めて目にしたあまりにもラフなその格好に、俺はつい思ったそのままを口に出してしまった。
「風呂上がりか？」
「そうだが…他に聞くことはねぇのか」
ごもっとも。仰る通り過ぎて反論の余地もない。
言われてからようやく真面目に現状の把握に乗り出せば、感覚の無い脚に、動かすこともできない手。辛うじて自由な首をぐるりと回せば、手はご丁寧にベッドの柵に縛り付けられ、脚はギプスがしっかりと嵌められていた。なるほど、感覚がないのは麻酔のせいか。
「寝てる間に俺が暴れでもしたか？拘束を解いてくれると助かるんだが」
「念の為に縛っただけだ、痛くはねぇだろ」
「つまり、ただ縛っただけか。…俺を助けたことでベルモットに恩でも売る気か？残念だが、俺にそこまでの価値はない」
「あの女にそんなくだらねぇ恩を売るほど暇じゃねぇよ」
吐き捨てるようにそう言ったジンは、そのまま軽い足音を立てて俺の側へと歩み寄ってきた。普段なら硬い靴音が響いてさぞ恐ろしかっただろうが、裸足らしい今はペタペタなんて軽い音がするだけで欠片も怖さは無い。
縛り付けるくらいだから警戒されているのかと思いきや、どうも敵意はないようで、全く訳が分からなかった。
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作者名：櫂渦【とーか】
| 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/28997649
作成日時：2023年5月28日 23時
