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『勘違いしてるのはあなたの方よ、暴れん坊のkitty』
『きてぃ?』
『仔猫ちゃん、って意味。ねぇあなた、薬をやってるでしょう。無いはずのものが見えたり、聞こえたりするのは、そのせいよ』
『そうか、だから妹は気づかなかったんだな』
静かに頷く彼の目には、もう何も、映っていないように見えた。このまま放って置けば、きっと彼は死ぬのだろう。彼のおかげで私の仕事は無くなってしまったし、全てを無かったことにしてさっさと立ち去ってしまうのがきっと正しい選択。
けれど、私は何故かそれがとても惜しくなってしまって、気づけば自分から、声をかけていた。
『ねぇkitty、良ければ私と一緒に来ない?』
『何のためだ』
『あなたの妹は、あなたに生きていて欲しと願ってるんじゃないかしら』
『俺は、あいつが望むような生き方はできない』
『薬をやめたら、少しはまともに近づくわ』
『依存できるものがないと、駄目なんだ。最初は親父、次は酒、今はクスリと……あとは多分、妹だった』
つまり、依存相手は人でも構わない、ということ。それなら、解決策は比較的簡単だった。
『なら、私にしなさい。お酒や薬なんかより、よっぽど上手に溺れさせてあげるわ』
『そうか。だったら、あんたに任せる』
あまりにも簡単にそう言う彼に、却って私の方が面食らってしまった。慌てて条件も提示したが、それでも彼の返事は変わらない。
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作者名:櫂渦【とーか】 | 作者ホームページ:https://www.pixiv.net/users/28997649
作成日時:2023年5月28日 23時