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私がkittyを拾ったのは、ほんの気まぐれだった。
ボスの命令で、あるグループを潰すために、その周辺の様子を探っていた時のこと。突然鳴り出した発砲音に何事かと思いながらも、状況の掴めていない私はしばらく物陰に身を潜めていた。
ようやく音が止んだ頃にそっと足を踏み込めば、目に飛び込んできたのは血だらけになって倒れている今回のターゲット達の姿と、部屋の片隅に立つ一人の青年。
彼の手には拳銃が握られていたことから、その場で何があったのかは、何となく察することができた。
『あんた、こいつらの仲間か』
『そう見える?』
『…見えないな』
そんな短いやり取りだけで、あっさりと手に持っていた拳銃を下ろしたあたり、きっと殺すことにまだ慣れていない子なのだろうということはすぐにわかった。
『全部、あなたが殺したの?』
『そうだな、俺が殺した。妹も、こいつらも、俺がやった』
彼の言葉にぐるりと足元を見回してみたが、“妹” という形容が当てはまりそうな少女の姿は、どこにもなかった。
『妹さんは、どうして亡くなったのかしら』
『…ついさっき、家を出ようとした俺に突き飛ばされて、吹っ飛んで死んだ。こいつらが、家まで押しかけてきたせいだ』
『あら、おかしいわね。私は数時間前からずっとこの近くにいたのだけれど、彼らはここから動かなかったわよ』
『あんたの勘違いじゃないのか。俺は確かに、家の中からこいつらの声を聞いたし、影も見た』
そう言って無造作に拳銃を投げ捨てた彼の腕には幾つもの注射痕があって、私はそれで彼が中毒者だと察した。
途端、幾つものことに合点がいって、納得する。何箇所も傷を負いながらも青年が痛そうにしていないのも、焦点が合わないぼんやりとした目をしているのも、シリアルキラーでも無さそうなのに殺人への恐怖を感じていないようなのも、全ては薬のせいだったのだろう。
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作者名:櫂渦【とーか】 | 作者ホームページ:https://www.pixiv.net/users/28997649
作成日時:2023年5月28日 23時