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[-ベルモット’s side-]
「…折れていたのは、肋骨だけです。大腿の怪我は何針か縫わせていただきましたが、太い血管は全て無事でした」
「そう、ありがとう」
「解熱剤も一本打ってありますが、この後また酷くなるかもしれません。何かありましたら、ご遠慮なくお呼びください」
「わかったわ」
「では、失礼いたします」
深々と頭を下げながら部屋を出ていった医者を見送ってから、ひとつ大きな溜め息を吐く。今夜は随分と、長い夜だった。
万全の計画を立てて動いたつもりだったというのに、ボウヤにはすっかりしてやられてしまった。赤井が来ているのに気づけなかったことも歯痒いが、まさかエンジェルまで飛び出してくるなんて。
結局、私の勝手な行動にも文句どころか疑問のひとつすら口にしないで淡々とサポートに回ってくれていたkittyのことを、置き去りにしてきてしまった。あの場では逃げる以外の選択肢がなかったとはいえ、都合よく利用しておきながら見捨ててしまったのは私だ。
「ライフルにショットガンに拳銃三丁、ね」
あの時の赤井の言葉を思い出して、そのまま呟く。あの子の武器はそれが全てでは無かったはずだ。最低でも、あと一丁は拳銃を持っている。だから運が良ければ…と、そこまで考えて、すぐに首を振った。
もう何年もの付き合いになるのだ。ジンとpuppyほどの深い付き合いではなかったが、仮にも自分のkittyと決めてそれなりに可愛がっていたあの子の考えなど、手に取るようにわかる。
死にたがりのあの子はきっと、私に捨てられたことを理解して直ぐに、残された拳銃を使って自害してしまったに違いない。
何しろ、自分の意志というものが恐ろしい程に希薄な、危うい子だったから。
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作者名:櫂渦【とーか】 | 作者ホームページ:https://www.pixiv.net/users/28997649
作成日時:2023年5月28日 23時