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そこまで考えてから、はたと気づく。
何が、兄貴と二人きりのA、だ。この場には他ならぬ俺がいるというのに、そんな姿を晒すのはおかしいだろう。
ということは、つまり、だ。
もしかしなくとも兄貴は、俺をここに呼ぶことを、Aに伝えていなかったのではないか。
今、口移しで水を飲ませる兄貴の身体に隠されて俺からAの姿は見えないが、同じように、向こうからも俺の姿は見えていないはずだ。おまけに、Aが起きてから俺はまだ口を開いていなければ、ろくに動いてもいない。
どういうつもりなのか、せめて指示を仰ごうにも兄貴はAを見るばかりでこちらに背を向けているし、二進も三進も行かなくなってしまった俺は、とりあえず、息を潜めてそっとその場で気配を消した。
「ん、もう十分飲めた。ありがと、ジン」
「フン。薬は抜け切ったか」
「と、思う。ジンこそ、体調大丈夫か？…昨日、その、色々無理させた…気がする、から」
突然Aの口からとんでもない発言が飛び出した気がして、思わず声を出しそうになったのを必死で抑える。
まずい。これ以上聞いていたら、兄貴に殺される気がする。
何とかして気づかれないうちに部屋を出ようと一歩踏み出したのだが、運悪く、ちょうど水差しをテーブルに戻そうと振り向いた兄貴と目が合う。
ニヤリと意味ありげに口角の上がったその顔を見て、俺はもう全てを察してしまった。敏い兄貴のことだから、俺が出て行こうとしたことには気づいていたのだろう。
だから、振り向いたのはきっと俺を牽制するため。その上で、兄貴がそんな表情をするということは。
……わかりやしたよ。兄貴が居ろってんなら逃げやしませんから、できる限りとっとと、この趣味の悪い惚気を終わらせてくれませんかね。
あんたは愉しいかもしれやせんが、ちっとは俺の居たたまれなさも考えてくだせぇ。
心中思うところは多々あれど、結局何も口に出すことなく静かに棒立ちに戻ることしかできないあたり、俺はやはり兄貴には弱かった。
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櫂渦【とーか】(プロフ) - シリーズを繋ぎ直しました！続きを読む、で次の話に飛んでいただけます！ (8月14日 23時) (
レス) id: 7ff0039a36 (このIDを非表示/違反報告)
櫂渦【とーか】(プロフ) - 点Ｐさん» ごめんなさい、コメントいただいて初めて次の話にシリーズが繋げられていなかったことに気づきました！まだ続きもupしてあるので、お楽しみいただけると幸いです！ (8月14日 23時) (レス) id: 7ff0039a36 (このIDを非表示/違反報告)
点Ｐ - 追いつきました…最高です！今まで見た中で一番好きです！最新頑張ってください！ (8月14日 21時) (レス) @page50 id: 7d48b43935 (このIDを非表示/違反報告)
櫂渦【とーか】(プロフ) - 乌罗伊利亚さん» ありがとうございます！これからもお楽しみいただけるよう頑張って参ります！！ (7月4日 21時) (レス) id: 7ff0039a36 (このIDを非表示/違反報告)
乌罗伊利亚 - とても面白かったです！今、一番好きな作品です 更新頑張ってください！！ (7月4日 12時) (レス) @page50 id: 21b25aa0ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：櫂渦【とーか】
| 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/28997649
作成日時：2023年3月11日 21時
