926. ページ27
だがAは、相変わらずほのかな温かさを感じさせる声で、静かにひとつ、提案をするばかりだった。
「弟の…スコッチの声を、お聞かせしましょうか。どうせ明かしてしまったのですから、この際構いません。俺の最大の弱点が確かに生きていることを、その耳で確認されますか？」
もちろん、声だけでスコッチの存命を証明できるとは思っていませんが…と続けたAの言葉に、それでも構わないから是非にと乞い願う。
ベルモットのように他者の声真似を得意とする者がいることを思えば、電話口の声だけでスコッチの生死を判定することは難しい。
それでも、確認しないよりは幾分も生存の可能性は高まるし、断るべき理由も───私がNOCであると日本警察に知られないのであれば───特には無い。
「ええ、あなたがCIAからの捜査官であることを日本警察に伝えるつもりはありません。声だけでも十分に解析されかねませんから、あなたにはただ黙って俺たちの会話を聞いていただく形になります」
「構わないわ、私にとってもそちらの方が都合がいいもの。だから…聞かせてくれるかしら、あなたの弟さんの声を」
「もちろんです。では、電話をかけますので少々お待ちください」
そう言って手元の携帯を操作し始めたAの顔が、先程よりもほんの少しだけ嬉しそうに見えるのは、気のせいだろうか。
やがてかすかに鳴り出した呼び出し音が、Aの手でスピーカー設定に変更されたことで大きくなる。軽快なその電子音を聞きながら、私は息を潜めてただ静かに、電話が通じるその瞬間を待っていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 68人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
櫂渦【とーか】(プロフ) - チャパさん» 嬉しすぎるお言葉、ありがとうございます！！マイペース更新にも関わらず追いかけてくださっていること、本当に嬉しいです。これからもお気の向く限り、男主の人生にお付き合いいただけますと幸いです( * ･ᴗ･ ) (2023年2月26日 9時) (
レス) id: 7ff0039a36 (このIDを非表示/違反報告)
チャパ - 沢山の作品の中で作者様のジンが1番好きです。飽きやすいので見なくなる作品は多々あるのですが、ずっと飽きることなく読ませてもらってます。前々から思っていたのですがふと好きだなーという感情がわいてきたのでコメントさせていただきました。長々とすいません。 (2023年2月23日 21時) (レス) @page38 id: b567095a1b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：櫂渦【とーか】
| 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/28997649
作成日時：2022年6月19日 21時
