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『おはようエルヴィン・スミス。』
「……あぁ、お前か。A、今何時だ。」
たったの一声で起きるのか。
いや、ハナから寝てなどいなかったのだろう。暗闇に浮かぶ二つの眼光がこちらを貫いた。
男は机の上で伏していたらしい。
『朝の四時だよ、髭でもお剃り致しましょうか、団長様。』
「…ご苦労。いや、自分でやるから出て行ってくれ。」
兵舎に朝日が差し込む少し前。まだ仄暗い廊下をロウソクで照らしながらある部屋に足を踏み入れる。
嗅ぎなれた香水の香りと、少し煙たいヤニの香り。
激務続きの調査兵団団長の部屋は、ぐしゃぐしゃにされて床に転がった紙切れ達で悲惨な状態になっていた。
私が髭を剃るなどという、柄にない冗談を言ったにもかかわらず反応がない。
相当お疲れの様子だ。
育ちのお陰か、基本的に眠りの浅い私は、朝方、調査兵団兵士長リヴァイと共にこの男の世話をしてやることがよくある。
もうすぐリヴァイが来る頃だろうか。
口で出て行けとは言うものの、私がいてもいなくても関係なしに、エルヴィンはアイロンのかかった白シャツへ腕を通し、ループタイを引き絞る。
部屋のカーテンを開けながら、少しずつ明るんでいく空に照らされて彼の肉体が浮かび上がっていく。
私はいつも何となくその所作を見ている。
兵団服に手をかけた辺りで、彼はこちらに振り返った。
無精髭をたくわえて、ぼさぼさの髪の毛。みっともないが、あとはリヴァイに任せよう。
「今日の訓練が終わったら、次の壁外調査の会議を行う。
リヴァイには伝えておくから、ハンジ達にも伝えておいてくれ。」
『はいはい。』
その日の予定が告げられたのを合図にこの部屋を出る。
あぁ、今日も朝からあの人類奇行種の相手をしなければならないのか、
少し気が滅入るものの、エルヴィンの命令なら仕方ない。
ぐい、と背伸びをして、私はゆっくりと廊下を歩きだした。
今日は少し、気分がいい。
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サキ(プロフ) - すごく続きが気になります!これからもがんばってください! (2020年9月25日 20時) (レス) id: 18417183d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:優奈 | 作成日時:2019年8月28日 2時