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「⋯⋯うちの孤児院はあの虎にぶっ壊されたんです。畑も荒らされ倉も吹き飛ばされて⋯⋯。
死人こそ出なかったけど貧乏孤児院がそれで立ち行かなくなって。それで口減らしに追い出された」
『そりゃ大変だったね』
「それで小僧。殺されかけたというのは?」
そう言われ敦はその時の怒りを思い出したのか机を叩く。
「あの人食い虎⋯⋯孤児院で畑の大根食ってりゃいいのに、ここまで僕を追いかけてきたんだ!
あいつ、僕を追って街まで降りてきたんだ!空腹で頭は朦朧とするしどこをどう逃げたのか⋯⋯」
「それいつの話?」
「院を出たのが二週間前、川であいつを見たのが⋯⋯四日前」
「確かに虎の被害は二週間前からこっちに集中している。
それに四日前に鶴見川で虎の目撃証言もある」
その敦と国木田の発言を聞いて太宰は考える素振りを見せた。
「敦君と天使君、これから暇?」
『⋯⋯え?』
「⋯⋯猛烈に嫌な予感がするのですが」
「敦君が人食い虎に狙われてるなら好都合だよね」
そこまで言って太宰は笑顔になる。
「⋯⋯虎探しを手伝ってくれないかな」
「い、いい嫌ですよ!それってつまり餌じゃなですか!」
『そもそも何で僕まで!餌なら敦君一人でいいでしょ!』
「良くないよ!?」
「人では多いほうがいいし、それに⋯⋯報酬出るよ」
報酬という言葉に敦と天使の頬が動く。
もう食事にありつけたとはいっても、先程まで生死の境をさまよっていた彼らにとって、
報酬とは神に近しい存在なのだ。
「国木田君は社に戻ってこの紙を社長に」
「おい、三人で捕まえる気か?まずは情報の裏を取って⋯⋯」
「いいから」
相方にそう言われれば黙ることしかできない。
国木田は若干不満そうに太宰から渡された紙を手帳に挟んだ。
「ち、ちなみに報酬はいかほど?」
「こんくらい」
「!」
『⋯⋯ハァ』
こうして、探偵と虎の戦いに彼らが参戦したのである
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暁月臨(プロフ) - 凄く面白いです!更新待ってます!! (6月24日 16時) (レス) @page16 id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
雪ん子(プロフ) - 凄い好きです❗️続き待ってます! (2023年4月26日 17時) (レス) @page16 id: fa924563b5 (このIDを非表示/違反報告)
クラスペディア(プロフ) - 面白かったです!更新待ってます✧*。 (2022年12月22日 13時) (レス) id: d83e92e5af (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - 面白いです✨ (2022年12月20日 5時) (レス) @page14 id: a32747b1ee (このIDを非表示/違反報告)
響輝@お気に入り400人突破ベリサンキュ(プロフ) - 面白かったです。続き楽しみにしてます (2022年11月24日 0時) (レス) id: d6b5ec7764 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:棘屋 | 作成日時:2022年11月21日 7時