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ベタベタ我慢 5日目 ページ25

私の前にトガちゃんがいる。


そんな状況はあり得ないはず。


私はついにトガちゃんの幻覚まで見えるようになってしまったのだろうか。


しかし、幻覚だとしたらリアルすぎる。


先程トガちゃんは、来ちゃいました、と言った。


声まで完全再現なんて、おかしい。


私が名前を呼んでくれないのが不服だったのか、目の前のトガちゃんは頬を膨らませる。


「Aちゃん!トガですよ?見えてる?」


私の前で両手を左右に大きく振った。


これは本物...?


「ほんとに、トガちゃん?

 幻覚じゃなくて?」


幻覚に、幻覚じゃなくて?、なんて聞いても返事は返ってこないだろう。


だから、返事が返ってきたらトガちゃんだ。


「うん!!」


彼女は大きく頷いた。


うん、このトガちゃんは本物だ。


「トガちゃん、会えたのは嬉しいんだけれど...

 どうしてここに?」


そう、トガちゃんがこんなところに来るわけがない。


私がそう思っていたからこそ、トガちゃんは幻覚だと、思ってしまった。


「フフッ、それはね...

 Aちゃんにとっておきのアイテムを持ってきたの!

 オーバーホールくんのところから持ってきた、“個性”上昇の薬です

 変なものじゃないから大丈夫!! これを使えばキャパが大きくなるんだって!

 仕事がはかどると思って持ってきたの」


トガちゃんは注射器を取り出す。


怪しいけれど、トガちゃんが持ってきたものなら大丈夫だろう。


私はそう思ってトガちゃんから注射器を受け取った。


「Aちゃん、私はもう戻らないといけないから行くね!

 お仕事頑張って!!」


トガちゃんはフードをかぶり直すと、足音を完璧に消して部屋をあとにした。


「ありがとう」


私が言った言葉はちゃんと届いただろうか。


そんなことを思いながら私は注射器を隠す。


理由は簡単で、スーツの方が戻ってきたからだ。


今日はあと一人、といってしまった以上今日は使えない。


明日の仕事でこの注射器を使わせてもらおう。


私は注射器に触れながら、トガちゃんの笑顔を思い出す。


あの笑顔があれば、私はいくらでも頑張れる。




そして、その数時間後


私は三人目の人の情報量の多さに嫌気がさしていた。


いくらでも頑張れると言ったけれど、これは想定外だ。


それに、この人が入れている知識は組織のものと関係ないものも多い。


アニソンの歌詞なんて仕事中に考えることじゃないだろう。


仕事の記憶を探ろうとしているのに、邪魔される。


こういうタイプの人は嫌いだ。私の仕事が遅くなるから。


仕事中は仕事のことを!

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鈴蘭(プロフ) - ゆいなさん» コメントありがとうございます!トガちゃんが大好きな方にそう言ってもらえて光栄です! (2020年8月21日 21時) (レス) id: f42ad491f0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいな(プロフ) - トガちゃん大好きなので最高です!、 (2020年8月15日 23時) (レス) id: ec54d11116 (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - 月雪桜@歌い手好きさん» コメントありがとうございます!トガちゃんの魅力が伝わっていて安心しました。次回作、何を作るかはわかりませんが読んでくださると嬉しいです! (2018年11月20日 22時) (レス) id: f42ad491f0 (このIDを非表示/違反報告)
月雪桜@歌い手好き(プロフ) - とてもトガちゃんの魅力が表にでていて(ヤンデレ的な意味も含めて)とても良い作品だと思いました!完結おめでとうございます!とても面白かったです。次回作も期待しております! (2018年11月20日 22時) (レス) id: ada51b0201 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鈴蘭 | 作成日時:2018年9月19日 23時

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