床下の古井戸 (ページ6)

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井戸のある居間① ページ6

　
スレの人達のレスを確認し、パソコンから壁にかけられた時計へと目を移した。
時刻は午前1時5分。

この時間はもう皆寝てしまっているだろうから、下へ降りるのは少し怖い。
けれどスレの人達の期待を裏切るわけにもいかないし、何より自分自身が音の正体が気になって仕方がないのだ。

音の原因を確かめるべく、恐怖心を心の隅に追いやって、上着を羽織って自室を出た。

　
　
そっとドアを開け、階段前まで進む。
自室の外は思った以上に寒く、思わず身震いした。
昼間の賑やかさが嘘のように静かで、それが一層不気味さを増していた。
ここは本当に自分の家なのだろうか、なんて馬鹿なことを考えながら階段を出来るだけ静かに降りる。

　
この家は古い。私の祖父が子供の頃から今のこの家に住んでいたと聞いているから、増築した所を除けば築60年以上は確実に経っているのだろう。

だからなのか、隙間風は入り放題だし、この階段も一段降りる度、今にも抜けてしまうと言わんばかりにギシギシと鳴る。それも結構大きな音で、だ。階段から離れた位置にある自室でさえ階段を上り降りする音は聞こえる。
だからこそそろそろと降りなければならないのだ。誰かを起こすことがないように、慎重に。
　
　
　
　
時間をかけて下りた階段の先は、真っ暗な闇で覆われていた。
明かりを持ってくれば良かったと後悔しつつ、壁伝いに居間を目指す。
この家の構造はそれほど複雑ではない。
階段を降りたら右に進んで2番目の部屋が居間だ。ちなみに台所と隣接している。
　
　
暗闇に目が慣れ始めた頃、ようやく居間の前に辿り着いた。
それほど時間はかかっていないはずなのに、体感的には1時間はこの暗闇の中にいるような気がしてくる。
　

寒さのせいか、はたまた別の何かが原因か。
僅かに震える右手をドアノブに伸ばす。
握ったそれが冷たくて、思わず手を引っ込めた。

心臓が煩く鳴る。普段はこれくらいのことではこれほど驚いたりはしないのに、状況が違うとこうも変わるのか。
なんて他人事のように思っていた。
　
　
　
　
　
────ズル、ズル。