知ってはいけない

抵抗 ページ11

「お帰り。……なに、あんた走って来たの？」
「あ、うん、まあね」


帰宅の挨拶もそこそこに玄関に入るなり息を整えていると、それを見た母に驚かれた。曖昧な返事をして理由を適当に濁す。夜道が怖いから走って来たなんて口が裂けても言えない。言ったら笑われるだけだ。

夕飯等やることを済ませば、あっという間に日付を超える少し前になった。いつもならすぐに寝るのだが、またあの夢を見るんじゃないかと思うと、とても寝る気にはなれない。

三日連続で同じ夢を見るなんてありえない、とは思うけれど、絶対にないとは言い切れないのがとてつもなく恐ろしいと感じてしまう。夢を見るのが怖いから眠りたくない、なんて、馬鹿馬鹿しいと自分でも思う。

出来ることなら今夜は一睡もせずに朝を迎えたいが、体に溜まった疲労がそうはさせてくれない。もう既に瞼が重い。気を抜けばすぐにでも寝てしまいそうだ。

ふと、パソコンに目が止まった。そうだ、ブルーライトを浴びれば眠気覚ましになるんじゃないか。よく「寝る前にスマホやパソコンを使うのは良くない」と聞く。健康上はよろしくないが、もうこれ以外に思いつかない。明日も平日だし登校日だけれど……何とかして乗り切ろう。


パソコンの前にある椅子に座り、パソコンを開く。とはいえ特に見たいものがあるわけでもなく、自然と例のスレッドを開いてしまっていた。私の最後の書き込みまで遡り、一つ一つ読んでいく。
すっかり忘れていたが、このスレッドは自分の恐怖体験を語るためのものだ。ありふれたような体験談ばかりでも、気晴らしには丁度良かった。読み進めていくうちに、だんだんと睡魔が襲ってくる。抗おうと思うもあっさりと負け、机に突っ伏し、瞼を完全に閉じてしまった。

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