【銀魂】新訳 狂愛と共愛2【高杉】【沖田】

54・あなたside ページ17

昔から、待つのは嫌いじゃなかった。


"お前何でこんなとこ居んの"


戦乱の中生まれて、早くに両者を亡くしたわたし。


"ッ…ごめんなさい、すぐにでていきますから、なぐらないで！"


"いや、別に俺の家でもねーし、好きなだけ居りゃいいと思うけど。ただ、"


捨てられたり、騙されたり。さ迷ってさ迷って。


"真冬にそんな格好で、吹き曝しとか寒くねーのかと思って。"


神社の隅で震えているところをお兄さまに拾われた。


"一緒に、来るかィ？"


やっと居場所を見つけた。


"いい、の…?でも、わたしおかねないよ、それでも、"


"イイに決まってらァ、近藤さんも、弱いモンを助けなけりゃならねェっつてたし"

ほら、やっぱり。


"決めた。今日から俺らは、兄妹…、俺はお前のお兄さまでィ"

待ってれば欲しいものは手に入るの。


だけど、少しだけ。


今度ばかりは、ちょっと辛くて。


挫けそうで。


なんであたしがこんな目に、って珍しく思った。


それでも、耐えたんだ。

前を向いて、笑って。

だけど、晋助がもう居ないって聞かされて。

もう待ってても無駄かなとか、手に入らないものもあるのかなとか、


そもそも、初めからわたしには、何も無かったのかなとか。


そっから全く記憶がない。


ただ何となく覚えてるのは。真っ暗い世界で独りキョロキョロしてたら


"A！"


皆の声が…、


"晋助だろ…ッ！！"


もう居ないはずの…晋助の声が聞こえてきて。


"おい…Aッ！しっかりしろよ！"


やっぱり待ってれば、見つけてくれた。


"軽いガキの気持ちなんざと一緒にすんじゃねーよ。"


"あいつが笑ってくれてりゃ上等だ。"


"待ってろって、言ったじゃねえかよ…っ"


こんなにたくさんの居場所があるんだって。


眠っている微睡みの中


"お前が居りゃそれだけでいいから…ッ"


沢山の懐かしい声が聞こえてきたような気がした…。

55・あなたside→←53・銀時side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す