【第1章:6話 ナツキ・スバル】 ページ8
「本当にありがとうございました」
迷子の少女の保護者は、あれから程なく見つかった。母親らしき女性は、A達に何度も頭を下げながら去って行った。
「……スバルはどうして手伝ってくれたの?」
エミリアは少し驚きを含んだ瞳で、スバルの方を見る。その理由を、Aも聞いてみたく耳を傾けた。
「俺は一日一膳して天国に行くんだよ。悪いことして地獄に落ちるのはごめんだからな」
『……女の子を助けたから、それで一膳な気がするけど』
Aの訂正にスバルは慌て
“いいことは1日に何回やってもいいじゃん。明日の分の前倒しだよ!“
などと、弁解する。
「一日一膳」の意味からズレてない?
そう心の中で思ったりするが、敢えて口出しはしなかった。
スバルの想いは、純粋にエミリアの力になりたいだけ。其ならば、ツッコミを入れる必要も無いだろうと、判断したからである。
それは、Aがスバルを信頼するようになったことの証は訳で。
初対面の時のことを密かに思い出す
どこから来たの?
――――東のちっさい国だな!
ルグニカより東の国などある筈がない。
要は、スバルは居場所分かっていないらしい。
さらに、字が全く読めず、自己紹介の時には、無一文だと言っていた。
そんな不審者極まりない人物を疑わずにはいられなかったのだった。
「スバルって、悪い子じゃないのよね…」
「ちょいちょい、年下扱いが気になんな。俺と君って年の差はあんまり無いだろ?」
「その予想当てにならないと思う。……私、ハーフエルフだから」
エミリアが、ほんの少しだけ目を細めて言えば、スバルから返ってきたのは想像とは違ったもので。
「なるほどな、どうりで可愛いと思った」
「あれ?私、ハーフエルフ……」
「聞いたよ?」
………どうやら、スバルという人物について思い違いをしていたらしい。
Aはパックと視線を合わせ
『「てい」』
「痛ぁ!2人揃って何すんの!?」
同時に、左右からスバルの頬を殴りつけた。
勿論、かなり手加減をして。
「なんとなく堪えがたいむずむず感を形にしたくて」
『私の心配を返せ』
「納得いかなねぇし、訳分かんねぇよ。
Aやパックまで俺が嫌いか!?」
――逆だよ。ねぇ、パック?
――うん。逆だね。
エミリアも彼に「……スバルのオタンコナス」と、睨めば、ますます不服な顔をする。
その一方で、エミリアとAの足取りは前より軽くなっていた。
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玲紋。 - 面白いです!読んでいて楽しいです!先が気になります。更新、頑張ってくださいね! (2017年2月1日 19時) (レス) id: 717061f029 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - ラキさん» すみません…現実の生活と小説を書く事の両立が難しくなっていまして本当に申し訳ないです。迷惑をおかけしますが気長にお待ち下さい。 (2017年1月30日 21時) (レス) id: 050b98d021 (このIDを非表示/違反報告)
ラキ - 最近更新してませんねー (2017年1月29日 22時) (レス) id: e83b796b67 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - 飾華さん» 最高とまで言って下さり有難う御座いました!更新遅くなってすみません!なるべく出来るように頑張ります (2016年10月18日 22時) (レス) id: 050b98d021 (このIDを非表示/違反報告)
飾華 - もう最ッ高です!次の展開が楽しみすぎる (2016年10月18日 17時) (レス) id: 7cff2cbe6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁風の夢 | 作成日時:2016年6月3日 21時