帯刀“鶴丸国永”

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それまで晴れていた天気が一転し、空は曇り模様。


そして、その男が現れた瞬間、本丸内の空気が冷たくなる。


「どちら様でしょう？」


「どちら様？
俺の本丸を乗っ取っておいてそれは無いだろう？」


ああ、なるほど。
未練がましくも、霊体となってまでこの本丸を引っ掻き回そうとしているのか。


「鶴、あなたを貸してほしい」

「キミに振るわれるのかい？
約1500年振りだなぁ、喜んで！」



ポトンと、吸い込まれるように手に触れる刀。数百年振りの相棒。


「小娘ごときがこの俺を断ち切ると？
馬鹿も休み休み言えよ、俺がどんだけ犠牲を払ってこの本丸をつくりあげてきたのかその体に教えこんでやる」


鶴を手にし流れ込んでくる記憶。
打たれ、過度な出陣を強いられ、泣いても喚いても無視。
更には、料理を作ってくれた刀剣に対し、罵声を浴びせ、
まるで横柄な殿様のように生活をする目の前の男に対しての記憶。



「口惜しいとはこの事ですか。
貴方のような愚人は三千世界の鴉でも殺せばいいのでは？」

太刀を一振り。
二振り。



「一振り目は傷ついた刀剣の分、二振り目は裏切られた刀剣の分、三振り目はこの世に生まれた罪の分。死んでなおこの世にしがみつくとは恥ずかしい大人ですね。死になさい。」




断ち切る？いいえ、裁ち切るんだよ、このアホ男。



「ありがとな、A」


「あるじさん……その、ありがとうございます！
これでぼくたち、とうけんのおもいはむくわれました！」




「ごめんみんな、体力使いすぎた」

自分でも驚く程に体が言うことを聞かない。
スローモーションのように倒れる感覚。



ちょっと、寝なきゃ。

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