シャルナーク ページ17
【ヒトリシズカ】
あの日の出来事をオレは今でも思い出す。
こうして、死ぬ間際に思い出すくらいなんだから
彼女はオレの中での大切な存在になったんだろう。
「シャルナークさん、ーー教会にヴィーナスの横顔っていう絵画が飾られたみたいですよ。」
彼女は珍しい念能力の持ち主で、同時に幻影旅団のメンバーだった。
「オレも知ってるし。」
オレより後に入ったのに仕事が出来る。
それがムカついて、悔しくて…つい素っ気ない態度をとってしまったんだ。
決して可愛くはない、なのになぜか惹かれたんだ。
「A…」
オレはこうしてAの名前を呼んで死を待つことしか出来ない。
まるで人形だ。
「シャルナークさん、こんな所で何してるんですか。
コルトピさんも殺られちゃって。」
これって、幻影かな。
なんで、こんな時に限って…愛しい人の声が聞こえるんだ。
「シャルナークさん…お人形になったら貴方の隠れている美しさが引き出せるのに。
なんで生きようと藻掻くのですか。」
生きよう…そんなこと思ってないさ。
ただ、この間際にお前に会えたことが嬉しいんだ。
「好きだったよA」
「全く。シャルナークさんは手のかかる上司ですね。
“好きだよ”でしょ。貴方が私の世界からいなくなるのは…全てが真っ黒に塗りつぶされてからですよ。」
「ハハ」
力なく笑うオレに手を翳すA。
あぁ、そっか…念能力…特殊だったよな。
「希望論…、ねぇ、シャルナークさん。
私も好きですよ。」
想いが通じ合えば完成する特質系能力『希望論』
やっぱり、お前はムカつくよ。
「ありがとう」
(ーーー隠された美)
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作者名：ヴィズ | 作成日時：2018年10月2日 0時
