紫陽花

#22 ページ23

その後はあっという間に時が過ぎ、学校祭を迎えた。

高校生活最後の学校祭。

クラスの事も生徒会の仕事も、当日はもっと忙しかった。けれど、楽しみがあるから頑張れた。

そう、一年ぶりに彼のギターが聞ける。

幸いにも私は彼がやるバンドの次の出番。

特別に、舞台袖から覗いていた。

彼の後ろ姿を見つめる、私だけの時間。


…
この後ろ姿を、何度も見てきた。

悲しい時、苦しい時、幸せな時、

いつだって側にいたのは彼だった。

支えてくれたのは彼だった。

この後ろ姿は、あと何度見られるんだろう？

きっと、彼のギターを聞けるのも最後なんだろうな。

そう思って、この場を噛み締める。
…


演奏が終わって、私の出番。

ステージを降りてきた彼は楽しそうな顔をしていた。

よし、頑張ろう。

ステージに登ってる時間なんてあっという間だった。


終えて生徒たちの後ろ、風の通る体育館の中間ドアの前に行こうとすると、ふと彼の顔が過る。

体制を低くして彼の前を通ると、小さな声で

哲也先生 : おつかれさん。

ドキッとして躓きそうになった。

しばらく後ろでドアの前を独占していると、

斜め前に彼が座る。私に背を向けて。

斜め後ろから見たアングルも素敵だな。

音楽を聞いて横に揺れてる姿が愛おしい。

ステージを撮るように見せかけて、
彼の後ろ姿も動画に収める。





忙しいぶん、何よりも幸せで、

2日間なんてあっという間に過ぎていた。



そして、始まる"最後"のカウントダウン

#23→←#21

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す