29話 ページ30
局長「…その様子だと、君は本当に行き詰まっているみたいだな。」
平子「だからこうしてあなたに頼んでいるんです。人の心があるのなら、私の気持ちも理解できるでしょう?」
局長「そうだな…。君の気持ちは痛いほどわかるよ。私だって鬼じゃない。…だが、話せないこともある。君が何を言おうと、ね。」
平子「なぜです!?私は彼女がなぜ死んだのか、それだけを知りたいんです。他のことはどうだっていい!どうしてそれだけのことが叶わないのですか!?」
局長「話すことはない。それだけだ。分かってくれ。私は君に失望したくない。…さあ、そのさSDカードだけ置いて、早く出て行きなさい。」
平子「話せないのであれば、これをお渡しすることは出来ません。」
局長「ハァ…。君は馬鹿か?そのSDカードにそれほどの価値はない。彼女も言っていなかったかい?9月30日を過ぎていたなら、それは捨ててくれ、と。所詮その程度のものなのだよ。渡したくないのであれば、捨ててくれればそれでいい。私は何も困らないからね。無論、処分に困るのであれば受け取ってもいいがね。」
平子「…っ!!」
最早これまでなのだろうか。本当に何も分からないまま、全てが終わってしまうのか?
しかし…本当にこのSDカードには価値がないのか?ならばいつ渡したっていいはずじゃないか。この日でなければ意味のないものなのならば、局長はこれを今、この瞬間、どうしても欲しいはずだ。ならば。
平子「…では、これは捨てさせていただきます。失礼しました。」
賭けだった。本当に捨ててしまっていいと思っているのなら、俺はここで全てを失うことになる。
局長「…平子君。」
部屋を出ようとした瞬間、声が掛かった。俺の、勝ちだ。
平子「何でしょうか。」
局長「私の負けだ。それが君の手にある以上、私は君に従わなければいけないようだね。ただ、全ては話せない。なぜなら私も、全てを知っているわけではないからね。…それでもいいかね。」
嘘をついている様子はない。局長すら、全てを知らないとは…どれほどAの闇は深いのだろうか。
平子「分かりました。局長が知っていることを話して下さい。それからこれはお渡しします。」
局長「全く…君が知ったとしても一つもいいことなんてないんだけどね。」
平子「覚悟はできています。本当の彼女を知りたい。それが今の私の、全てです。」
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駄郎(プロフ) - すごく心が痛くなりました(´;Д;`)めっちゃ切ない作品、、、素敵でした、、、(><) (2018年5月28日 1時) (レス) id: d57e5a8b8d (このIDを非表示/違反報告)
歯磨き粉(プロフ) - とても嬉しいです!ありがとうございます!この後どうしていこうか思案中なので更新待っていて下さい!頑張ります! (2016年7月27日 21時) (レス) id: dae8dd9e10 (このIDを非表示/違反報告)
かなり。(プロフ) - 最高です!!感情の表現がすごく細かくて尊敬します!!応援しています! (2016年7月27日 21時) (レス) id: 681ac572b8 (このIDを非表示/違反報告)
歯磨き粉(プロフ) - 意見ありがとうございます!確かに詰め込んでる感はありますので、改善していきます。 (2016年3月29日 21時) (レス) id: dae8dd9e10 (このIDを非表示/違反報告)
ハイキューって神だよね。 - 少しぎゅうぎゅうで読みづらいです。もう少し間が空いていると読みやすいです。無理言ってすみません。更新がんばってね。 (2016年3月18日 12時) (レス) id: 3186d38158 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:歯磨き粉 | 作成日時:2016年3月10日 23時