検索窓
今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:6,835 hit

7話 ページ9

郡「…っう…ん…」



あ「あ、郡さんおはようございます。」



郡「…っ。」



あ「…どうしました?」



起きて、私がいたことに驚いたのだろうか?郡さんは一瞬ハッとした表情のまま固まっていた。
ハァ…という深いため息の後に口を開く。



郡「君は……本当に私を絶望のどん底に落とすのが好きなようだね。」




あ「えっ?何のことですか?」



郡「君はさ、似ているんだよ…ハイルに。雰囲気とか、声とか…。起きた時、ハイルがいたのかと思った。でもハイルがいるわけない。その現実に酷く落胆した。これからハイルがいないという事実に、何度打ちひしがれるのかと思うと今から辛いよ。」



あ「郡さん…」



彼の弱った顔が何とも妖艶で、つい気持ちが高揚するのが分かる。けれど、やっぱり彼は悪魔で…



郡「いっそのこと、君が死んだんだったら良かったのに…。」



あ「…っ。」



なんて酷い仕打ちなの。なぜそこまで言われなくちゃならないのか。流石に酷すぎる。自然と涙が溢れ落ちた。泣いたって、面倒臭いと思われるだけなのに、涙は止まってくれなかった。きっと今まで我慢していた分が一気に溢れてしまったのだろう。



郡「…さすがに言い過ぎだったね。ごめんね。」



郡さんの手が私の頭を優しく撫でる。それだけでさっきの仕打ちも許してしまえるのだから、本当…惚れた方が負けってやつなのね。



あ「……いえ。それだけ、ハイルちゃんがあなたにとって大切だったということですから。」




郡「良かった。君なら分かってくれると思ったんだ。ねえ、私から一つ提案なんだけど…君、ハイルの代わりにならない?」



あ「……え?」



今までだって、私はハイルちゃんの代わりでしかなかったじゃないか。今更なんでそんなこと…。



郡「私は、ハイル以外を愛せない。でもハイルはもういない。君はハイルにとても似ているでしょう?だから、君がハイルになるのならば、私は君を愛してもいいよ。」



彼の瞳は真剣そのもの。どうやら冗談ではないようだ。つまり彼は、私の人格をも否定し始めたということか。けれどハイルちゃんとして生きていければ、彼は私自身に愛を囁いてくれるということだ。
ーーーそうまでしてまで、私は彼の視線が欲しいのか。自嘲気味に少し笑って、狂った彼に、狂った私は返事をした。



あ「……喜んで。」

8話→←6話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 7.5/10 (13 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
7人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:歯磨き粉 | 作成日時:2017年1月16日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。