3話 ページ5
郡「何を惚けているの？」
あ「……だって…」
郡「君はさ、私に何を求めているの？」
あ「何って……それは…」
付き合うということに、夢を抱いているわけではない。けれど、少しでいい。……少しでいいから、私を愛してくれはしないのか。こんなの希望もないじゃないか。
郡「まさか、愛…とか言わないよね？私は君にそんなものをあげるつもりはない。それが嫌なら一生私に片想いでもしてればいいんじゃないの。」
あ「…っ。」
郡「…で、どうするの？私は、愛以外のものなら君になんでもあげられるよ。さっさと決めてね。私も暇じゃないから。」
あ「…っお願い、します…。」
この時、私が別の選択をしていれば…未来は変わっていたのだろうか。今ならわかる。彼は、天使の皮を被った悪魔だったのだと。けれどそれに気付いた時にはもう遅くて。私はズブズブに、彼に溺れてしまったから。
郡「…そう。じゃあこれからよろしくね。あ、付き合うと言っても、私たちの関係は他の人に話しちゃダメだよ。それと、連絡は私の方から入れるから、君からは連絡しないでね。それと、私は浮気するから。」
つらつらと、まるで当たり前のことのように理不尽な条件を話す宇井さん。こんなの普通に考えたらアウトだ。いくらなんでも自己中心的すぎる。けれど、もうすでに私は普通じゃなかったらしい。それでもいい、と思ってしまったのだから。……いや、きっと私が頑張れば、彼の気持ちも動かせるとタカをくくっていたのだ。
ーーーそんなことあるわけないのに。
あ「……宇井さん。」
郡「郡でいいよ。何？」
あ「……もう一度、キスをしてくれませんか？」
頭の隅で、私の理性が警鐘を鳴らしている。けれど、私はそれを無視した。彼の、あの甘ったるくも切ないキスを、どうしてもまた味わいたかったから。
ーーーああ人間の欲とは、なんて醜いものなんでしょう。私は、ただ肉欲に溺れることで、彼の視線を少しでも私に向けたかったのだ。
郡「君は、欲しがりさんだねぇ。…いいよ、あげる。君が狂っちゃうくらい、凄いのをさ。」
好きだ。好きだ好きだ好きだ！！！ねえ私、あなたの虜なの。ねえ私、あなたに夢中なの。
ねえ………
私を愛して…？
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作者名：歯磨き粉 | 作成日時：2017年1月16日 23時
