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「Aがこれまでどんな経験をしてきたか、俺は知らねェ。だけど、侍であり続けたかったんだろ。それで良いじゃねェか」
「……そう、思うか？」
「おう、俺はAと初めて会ったとき、手合わせしただろ？あん時すげェ驚いたよ。わくわくした。女でこんなに強ぇ奴がいるんだって、知らなかった」
だから、と土方は穏やかな笑みを浮かべて言った。
「俺はAみてぇな侍になりてぇんだ。
Aは澄んだ青の瞳に、静かに燃え上がる焔を見た。夢を追いかける、その情熱。いつからか忘れてしまっていた。かつては確かにAにもあったのだ。
ーー私、お父さんみたいな皆を守る侍になる。
まだ純粋無垢で、汚れを何も知らなかった頃。尊敬と憧れが胸一杯にしめていたことを思い出す。正直に好きなものは好きだと叫んで。素直に侍になりたいと夢を追いかけていた。あの本当の気持ちだけは、見失ってはいけなかった。気付かせてくれたのは、紛れも無い土方だ。
ふっと、Aは頬を緩めて言った。
「絶対なれるよ、オマエなら」
「見とけよA。俺は近藤さんを大将に、必ず立派な侍になってやる」
「それは、凄く楽しみだな」
さああ、と優しい風が吹き抜けて行った。高く結い上げた土方の黒髪が揺れる。殆ど葉桜となってしまった大木が、夢を応援するように最後の花弁を落とした。小さな桃色の花びらは、ふわりふわりと舞い踊って地に落ちる。
出会いの春が、今終わりを告げようとしていた。
※
「あ、こんな所にいたんすね！」
何処からか、慌てたような声が飛び込んで来る。バタバタと大きな足音をたてて、走り寄っていたのは食客の一人である永倉だ。
「おう、どうした？」
「大変なんすよ土方さん
「とんでもねぇ噂ぁ？」
女に惚れっぽく、何度も告白しては失恋記録を更新する永倉の事だ。今回も美女を町中で見かけただとか、くだらない内容なのだろう。呆れた顔をすれば「今回のはマジな話なんだよ」と、切羽詰まった様子で吠える。
「どうやら松平って幕臣が、江戸の治安を守る浪士組っつー部隊を設立すんだって！近いうちに入隊希望者を募るらしい！俺達でも、武士になれるかもしれねぇんだ！！」
「ーーえ？」
土方十四郎と津々楽A。
今、両者にとっての運命の選択が間近に迫っていた。
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☆辻村春樹☆(プロフ) - ハルさん» 初めまして！コメントありがとうございました。沖田姉弟の場面もこだわって書いている部分が多いので好きになって頂けて嬉しいです。総悟は出番少なかったので徐々に増やしていけたらいいなと思ってます！これからもよろしくお願いします。 (2022年1月6日 23時) (
レス) @page35 id: 4b0a37e42a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 初めまして。沖田が姉上とデェトと言うところが可愛すぎます……。あと文章がめちゃくちゃ好きです。とても引き込まれます。ミツバの印象のシーンなんてもう感動いたしました！これからも応援しています！ (2022年1月6日 22時) (レス) @page14 id: 2a42df9825 (このIDを非表示/違反報告)
☆辻村春樹☆(プロフ) - いくまさん» わ、嬉しい！ありがとうございます！！需要ないよな、と落ち込んでましたが、おかげでこれからも書き続けられます、更新頑張ります！！（嬉し泣きしそうです…） (2021年12月13日 18時) (レス) id: 4b0a37e42a (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 新作ドタイプです…陰ながら全力で応援させて頂きますね、、！更新頑張って下さい！ (2021年12月13日 17時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：☆辻村春樹☆ | 作成日時：2021年12月12日 20時
