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「後悔なんざしねェよ」
土方は迷うこと無くきっぱりと言い放った。何処までも続く青い空を見上げ、何かを渇望するように手を伸ばす。藍色の瞳は、まだ見たことの無い未知の景色を思い描いているように見えた。眩しげに、すっと目が細まる。
「なァ、Aは将来の夢ってあるか？」
「そう言う土方は何かあんの？」
「俺？俺は、そうだなーー……」
土方の視線が、Aの腰に注がれた。命より大事な愛刀だ。将軍様や幕臣らが使うような業物では、決して無い。無銘の、何処にでもあるような有り触れた刀。だが、Aが自分の金で、自分のために手に入れた最初の日本刀だ。思い入れも強い。それを羨望の眼差しで眺めてから、土方は言った。
「俺は、侍になりてェんだ」
Aは驚愕に目を見開いた。
攘夷戦争が集結した今の世は、腐り切っている。特に将軍のお膝元である江戸では攘夷志士狩りが頻発し、その魔の手は攘夷志士だけでなく、彼らの家族にまで及んだ。その罪人たちの首は日々河原にて晒されており、その光景は地獄絵図と言っても過言では無い。
「……今の侍に、憧れる要素は何処にも無いはずだが」
「ああ、分かってらァ。この世の中は腐ってる。だからこそ、武士よりも武士らしく生きてェんだ」
「そんなに良いもんか？侍なんて」
思わず目を反らした。これ以上、土方を見ていられなかったからだ。かつてのAも土方と同じように、侍に憧れていた時期があった。だが、その道を進んだ先にあったものは、周囲の人間が刀を振る女に向ける奇異、嘲笑、妬み、そして落胆。
Aは剣の才能に恵まれていた。年の離れた兄よりも、だ。もしAが男に生まれていたら、と何度言われたことか。
「仮になれたとしても、綺麗事だけじゃ通用しねぇ。現実に絶望するだけだ。土方には悪いが、止めた方が良い」
「なら、オマエは何で剣術修行の旅なんかしてる？どうして
「……っ！」
土方が指で指し示したのは、Aの大切な刀だった。反射的に鞘を持つ手に力が入る。既に身体の一部のようになってしまった重みを、再確認するように。
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☆辻村春樹☆(プロフ) - ハルさん» 初めまして！コメントありがとうございました。沖田姉弟の場面もこだわって書いている部分が多いので好きになって頂けて嬉しいです。総悟は出番少なかったので徐々に増やしていけたらいいなと思ってます！これからもよろしくお願いします。 (2022年1月6日 23時) (
レス) @page35 id: 4b0a37e42a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 初めまして。沖田が姉上とデェトと言うところが可愛すぎます……。あと文章がめちゃくちゃ好きです。とても引き込まれます。ミツバの印象のシーンなんてもう感動いたしました！これからも応援しています！ (2022年1月6日 22時) (レス) @page14 id: 2a42df9825 (このIDを非表示/違反報告)
☆辻村春樹☆(プロフ) - いくまさん» わ、嬉しい！ありがとうございます！！需要ないよな、と落ち込んでましたが、おかげでこれからも書き続けられます、更新頑張ります！！（嬉し泣きしそうです…） (2021年12月13日 18時) (レス) id: 4b0a37e42a (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 新作ドタイプです…陰ながら全力で応援させて頂きますね、、！更新頑張って下さい！ (2021年12月13日 17時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：☆辻村春樹☆ | 作成日時：2021年12月12日 20時
