大好きだから/tntn ページ12
かちっかちっ、と無機質な時計の音が部屋に響く。
トントンを待っていたらいつの間にか日付はかわっていた。
いつ帰ってきても良いようにと準備していた食事はすっかり冷めきっていて。
私の規定値下回ってる、なんて呟くとガチャリとドアノブをまわす音がして。駆け寄れば、私の大好きな人が微笑みかけてくれる。
「ただいま。寝とってもええのに。」
疲れるやろ？なんて、優しい言葉をかけてくれる。遅くまで働いている彼に私がかけなければいけない言葉な筈なのに。
貴「いやよ。おかえりトントン。ご飯にする？お風呂にする？」
愛しい人にギュッと抱きつきながら、選択肢を投げ掛ける。
「……お前、は？」
え、と顔を上げるとなんやないんか、と残念そうにしているトントン。自分から言ったにも関わらず耳を朱に染めている彼はなんて可愛いのだろうか。
しかし、少しばかり気まずくなってしまった。
貴「トントンが食べたいなら、いいよ。」
「は！？」
目を見開いて驚いた顔をするトントン。私の言葉は予想外だったのだろうか。意外、だとしても、私が求めるのはいつもトントンだけなのだから。
「……食べたなってきたわ。お前、どうしてくれんねん。」
トントンは片手で顔を覆って困った表情を浮かべている。顔は茹でダコのように真っ赤になっていて、それを見るだけで改めて好きだなぁなんて思ってしまう。
貴「でも、その前に晩御飯はちゃんと食べてね。」
「生殺し状態ですか。」
貴「私を食べる条件だから。」
「……はい。」
ふふんと、勝ち誇ったように笑えば肩を落として私が作ったものを食べ始める。
なるべく急いで、尚且つ味わおうと食べているトントンに思わず口許を緩める。
私もと思い、向かい側に座ってお箸をもつ。味噌汁に口をつけて、一言。
貴「トントン、愛してる。」
私と同じく味噌汁を味わっていたトントンはぶふぉっと味噌汁を吹き出し、慌てたように此方を見る。
貴「料理も私も、味わって食べてね。」
呆然としている彼を視界にいれつつもう一度味噌汁を啜る。
トントンははーっと大きな溜め息をついた。
「A、可愛すぎるやろ。」
もう、無理だとでも云うように彼は私の腕を掴んでそっと唇を重ねた。
突然のことに驚いた。頬に熱が集まっていくのを感じながらトントンと目線を合わせる。
「今日は優しくせえへんからな。」
堕天したように妖しく笑みを浮かべる彼に私は言葉を発することは出来なかった。
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作者名：大佐 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年2月5日 15時
