バレンタイン/knsm ページ11
今日はバレンタインだ。女性である私にとって思いを伝える大切な日、のはずだった。
「俺チョコ嫌いやねん。」
これを聞いて、シッマに渡して、告白してしまおうと考えていた私の覚悟は一瞬にして砕け散った。当たって砕けるどころか、当たることすらできないなんて。
誤算だった。チョコが嫌いな人なんてほとんどいないと思い込んでいた。幸いにもこれを言われたのは他の女の子だった。
義理ではあるものの、作ってきたものを嫌いと跳ね返されて、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
貴「…………どうしたらいいの。」
最早手に余るものとなったチョコを見つめる。徹夜までして頑張ったもので、我ながら美味しく出来たと自負していた。
椅子にもたれ掛かりながら溜め息をつく。
「なになに？どないしたん？」
急に話しかけられビクッと肩が揺れた。声の方をみやると、大先生だった。用事でもあるのか私の横の椅子に座る。丁度良いかもしれない。
貴「大先生……いる？」
「え、俺貰ってもええの？」
貴「いいよ。」
もう必要の無いものだし。と心の中で呟く。私が食べても良かったが、それだと虚しくなるだけだろう。
自分が作ったもの、人に評価されるほうがよっぽどいい。
「じゃあもらうわぁ。」
幸せそうに緩みきった顔でチョコを摘まむ。が、その手は叩き落とされた。
「大先生なにやってるん？」
大先生の手を叩き落としたシッマは冷たい目で私たちを見下ろしていた。
いつも子供のように無邪気に笑う彼は豹変していた。
「シッマ遅かったなぁ。……すまんな。」
余裕綽々といった表情でチョコを一つの口に運び、席を立つ。
意味深げな台詞を吐いて、彼はこの場を去った。
貴「……シッマ？」
手を握りしめ俯いている彼に声をかける。
「何で大先生やねん。」
え、と口を開く前にシッマは私の口の中にチョコを一粒入れた。甘さ控えめに作ったチョコの味が口の中で広がる。
「俺チョコ嫌いやねんけど、お前のチョコとられんのもっと嫌や。」
それだけ言うと彼は私の唇と自分のソレを重ねる。自分の舌を侵入させ、チョコを舐めとる。
貴「ん……。」
甘くとろけるようなキス。シッマは一瞬不快そうな顔をするが、口の中のチョコを夢中になって味わう。
堪能したのか、唇を離す。
「やっぱチョコ嫌いや。」
そう言いながら彼は私に優しく微笑んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 318人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：大佐 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年2月5日 15時
