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第44話 ページ10

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「Aくんは、指導案の実物を見るのは初めてでしたか」

「はい」

「指導案の書き方は今後実習に入る前にしっかりやりますが、今から見ても勉強にはなります。書き込みもして結構ですから、どうぞ役立ててください」

「ありがとうございます」

Aが指導案に目を通している間に、ハッサク先生は授業準備にひと段落ついたようだった。

「さて……ああそういえば、今日は生徒指導論のレポートの提出日にしていましたね。どうですか、持ってこれましたかね?」

「はい、大丈夫です」

「では授業が始まるまで少し余裕がありますし、軽く読ませていただきましょうかね」

「わかりました、今出します」

Aは鞄の中からプリントをまとめておいているクリアファイルを取り出し、その中からホチキス止めされたレポートを取り出した。

「よろしくお願いします」と言って差し出すと、「では早速拝見しますよ」とハッサク先生がぱらりと表題ページを捲った。

「Aくんも立っているのはきついでしょうからどうぞ適当なところに座っていてください」

「あっ、ありがとうございます」

Aはありがたくハッサク先生の斜め向かいの席に腰を下ろし、真剣な表情でレポートを読むハッサク先生を見守る。

先程「軽く」と言っていたのが嘘のように、ハッサク先生は真剣にレポートを読んでくれているようである。

何分経っただろうか。

ふいに、キーンコーンカーンコーン……とチャイムが鳴った。

寮生活の生徒向けの、1時間目の始業15分前のチャイムである。

「おや、もうこんな時間ですか。そろそろ生徒たちがやってきますね」

ハッサク先生はそう言って立ち上がった。

「レポートの続きはまた後で読ませてもらうとしますよ。途中までしか読めていませんが、今回もいい出来です、流石ですね」

「ありがとうございます!」

「さあ、気合を入れて1年生を迎えるとしますかね」

ハッサク先生がレポートを仕舞って少しすると、美術室に続々と生徒たちがやってくるようになった。

そしてその中には、

「あっ、Aさん!」

「アオイちゃん!」

先日出会い楽しい時間を過ごしてくれたアオイの姿もあった。

「なんでAさんが1年生の授業にいるんですか?」

「ああ、私は見学だよ。ほら、先生目指してるって言ったでしょ?ハッサク先生がどんなふうに授業してるか見学させてもらうの」

「へー!」

そして、アオイの少し後に入ってきた生徒に、Aは見覚えがあった。

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作者名:リトルポム | 作成日時:2023年1月14日 22時

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