第42話 ページ8
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「……君はエリアゼロを知っているの?」
そう問えば、男子生徒は大きく肩を揺らした後、「……昔の話だよ」と視線を逸らした。
言いたくないのであれば無理に聞く必要はあるまい。
「でも、知見を広げるのにはいいかもしれないから、しばらく借りて読んでみるよ」
「そーかよ、こんなの読みたがるなんて物好きだな」
「君はこの本を読んだことがあるの?」
「ある。つーか現在進行形で何度も読み返してる。一冊持ってるからな」
「ええっ、そうだったの?」
一体目の前のこの生徒は何者なのだ。
単なるアカデミーの生徒がパルデアの大穴に関する情報を積極的に得ようとするとは考えにくい。
となれば、周囲にこの本がある環境に身を置いていたということ。
「ってことは……ご家族や知り合いに、パルデアの大穴に関するお仕事をされている方が?」
「なんでわかった!?」
男子生徒は驚きの声を上げた後、「……親父がエリアゼロの研究してんだ」と教えてくれた。
「そっか。でもそれにしたって、どうして何度も読み返したりなんか……エリアゼロにいい思い出はなさそうだけど」
「あー……オマエ、『秘伝スパイス』のとこ読んだか?」
「ううん、そこに行く前に声をかけられたの」
「そっか。オレはその『秘伝スパイス』を探してんだ」
「そうなんだ」
「なんか強いポケモンと戦わないといけないっぽいから、アオイってヤツに協力頼んでんだけどな。……オマエ、バッジいくつ持ってるとか聞いていいか」
「バッジは8つ。一応チャンピオンランク」
「まじかよ!?うわーっ、俺すげー人と知り合ったんじゃねーか!?」
「あ、ありがとう?」
「なあ、オマエも良ければ『宝探し』のついでに『秘伝スパイス』探し手伝ってくれるか!?」
一気にテンションが上がったその生徒にこの返答は大変申し訳ないのだが「……ごめんね」と言うしかない。
「私はもう授業として『宝探し』に参加はしていないの」
「へ?生徒なのに?」
Aを知らないのであれば、この反応も当然か。
Aは簡単に自分の事情を話して聞かせた。
「なるほどなー。オマエも結構大変だな」
「あはは……でもやりたいことをやってるから辛くはないかな」
「そっか。とりあえず、『秘伝スパイス』探しはオレとアオイで頑張るぜ!どうしても必要になったら……その時は手伝ってもらってもいいか?」
「もちろん。できうる限りサポートするよ」
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作者名:リトルポム | 作成日時:2023年1月14日 22時