第67話【回想5-2】 ページ37
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「そして、このモノズというポケモンは、数いるドラゴンポケモンの中でも一等育てるのが難しいんだ」
「どうしてですか?」
「まず最終進化形のサザンドラまで育てるところまでが本当に長いんだ。第二形態のジヘッドにすら、レベル50にならないと進化しないし、サザンドラにしようと思えばレベル64までかかる」
「ええーっ!?」
つまり、生まれてからレベル50になるまでは、ずっとモノズのままということになる。
ニャオハがレベル50までニャオハでいるようなものだろう。
進化していない子のあの打たれ弱さが長い間続くことになるのだ。
「途方もない、ですね……」
「そうだろう?それに、この一族は非常に凶暴なことで有名なんだ」
「え!?」
「モノズの頃から何にでも嚙みつくし、サザンドラに至ってはその凶暴さで村一つ滅ぼすことも可能なほどだ」
「む、むらひとつ……」
そこまで凶暴なポケモンならば、確かに育てるのも難しいし、育成放棄されてしまったらたまったものではないだろう。
「ただし、きちんと愛情をかけて育ててやれば非常に強いアタッカーに育ってくれる。知能自体は高いポケモンだから、言うことを聞いてくれるようにもなるだろう」
「そうなんですね……」
「何人かのトレーナーとバトルをしてこのタマゴを託す相手を見極めていたが……きみのポケモンを見て確信した。きみならきっとモノズを育てられる」
「そうでしょうか……私、まだトレーナー歴ほんとに浅くて……」
「それでも、ここまで愛情深く、丁寧にポケモンたちを育てている。俺は職業柄かなりの数のトレーナーとポケモンたちを見てきているが、きみはその中でも指折りのトレーナーだよ」
「……わかりました。そこまで仰るのでしたら」
「ありがとう!」
男性は嬉しそうに笑って、タマゴをAの鞄に入れてくれた。
「よし。それじゃあ、モノズのことを頼んだよ」
「はい。頑張って育てます!」
「次に会うことがあれば、どんなふうに育ったか見せてほしい!」
「もちろんです」
「俺は別の地方の人間だから、なかなか会う機会はないかもしれないが……きみとモノズのこと、そしてきみの大事なポケモンたちのことを、ずっと応援しているからな」
「ありがとうございます!……えっと、お名前」
「ああ、そうだった。俺はジョウト地方から来たワタル!きみは?」
「Aです!」
この日も風が吹いていた。
サアアッ、と、草が靡く音が、二人の間を抜けていった。
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作者名:リトルポム | 作成日時:2023年1月14日 22時