第38話 ページ4
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「いやーやっぱし可愛い可愛いAのことはチリちゃんが養いたいなと」
「それはどうかと思いますですよ」
「えー……」
「そもそもAくんは学生とはいえ今や立派なポケモントレーナーとして自立して生活していける実力があるのですから」
「まあそれは確かに。奨学金も返し終わったんやったな?」
チリの問いに「うん」と頷き、
「オモダカさんに『在学中に返還が終わるとは素晴らしいです』って褒めていただけたよ」
と付け加える。
「さすがやな〜、教師目指してなかったら卒業後はAもリーグで仕事してたんかな〜」
「ですがAくんは特定のタイプに偏る編成はしないバランス型のポケモントレーナーですから、逆にリーグ所属のトレーナーとして働くのは合わないかもしれませんですよ」
「あーそれは確かに」
ポケモンリーグ所属のポケモントレーナーたち―――要するにジムリーダーや四天王といった面々は、各々自分の得意なタイプのポケモンを集中して育てる者ばかりだ。
それには自分の好みだけでなく、自分という人間のルーツや生き様が反映されていたりもする。
そうした尖った特徴こそ、ジムリーダーや四天王としての各々の個性や売りとなっている。
一方でAは様々なタイプのポケモンを組み合わせた編成を得意とする。
リーグ所属の者でいえばオモダカと同じ、要するにそう何人もいらないタイプだ。
そんなわけで、尖った特徴を求められるリーグ所属のポケモントレーナーとして勤務するのはあまり合わないだろう、というのがハッサク先生の見解である。
「Aくん自身はどうですか?」
「私もリーグ勤務は合わないかなって。一つの場所で挑戦者相手にガンガンバトルをこなすよりだったら、もっと世界を感じながら、いろんな人と出会って戦って、新しい発見をしながら成長したい側かなって思います」
「なはは、Aらしいわ〜。で、先輩教師として、ハッサクさん、お給料ってどんな感じなん?」
「グレープアカデミーはご存知の通り大きな学校ですから、それなりに頂けますよ。勤務する学校によってまちまちだとは思いますが、要資格の職業ですから、生活に困るほど低いということは無いはずですね」
「ほほー」
そんな話をしていると、グレープアカデミーの大きな建物がはっきりと見えるようになってきた。
「お、もうすぐテーブルシティ到着やな」
「すっかり空も茜色ですね」
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作者名:リトルポム | 作成日時:2023年1月14日 22時