第57話 ページ25
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「てかなんで私のジム戦の話してたんだっけ……」
「A氏ボクと戦ったわけじゃないから配信映ったことないってとこからだよ〜、ぐすっ」
「あ、そうだったそうだった」
そう、本来の話題はナンジャモの配信に関してだったのだ。
「ぐすっ、で、どうするA氏?」
「うーん……私は今回は遠慮しとくよ。今日の授業見学のレポート、早めに仕上げたいし」
「あー、今日ハッサクさんの授業見学あったんか」
号泣から復活したチリが、鼻水を拭きながら聞いてくる。
「そう。授業見学があったら必ずレポート出すことになってるから」
「大変やなあ。でも苦ではないんやろ?」
「もちろん。だってやりたいことのための学びだもん」
だから、大変ではあるけれど、辛い、苦しいという重い感情は乗らないのだ。
「そっかそっかー。残念だ〜。また機会あったらヨロシクだぞ!」
「うん、機会があれば」
「でもそうなるとー、ポピー氏も出れないかー。まあでもまたチャンスはあるよねってことで、ポピー氏今夜はボクんちおいでよー!定期配信見てくといいよ!」
ナンジャモの配信の様子を見られることになったポピーは、「わぁ、楽しみですの!」と表情を輝かせた。
「ついでにお泊まり会しちゃう?しちゃう?」
「えーっ、お泊まり会もですー!?パパとママに聞いてみるですー!」
早速電話をかけ始めるポピーと、今日の企画はどうしようかと考え出すナンジャモ。
そしてこの楽しそうな雰囲気をぶち壊す、「怒りの日」の着信音。
「「「……」」」
チリのスマホロトムから鳴り響くこの音は、チリの表情を一気に険しくさせた。
「……」
「チリ姉さん……?」
「……A、もっかい充電」
「え?」
いきなり抱き着いてきたチリに驚いたが、とりあえず背中を撫でてみる。
「はぁぁ……チリちゃん行かなあかんくなってしもうた」
「行かないと……ああ、もしかしてオモダカさん?」
「せや……
「なるほど、チリ姉さんにとってあまり嬉しくはない連絡だもんね……」
チリはAに抱き着いたまま「もしもし」と電話に出る。
「……はい、……またなん!?行きたないんですけどー……あーはいはい、わかってますって」
チリは「今ハッコウシティなんでまた特急つけて戻りますわー……」と返答し、通話を切った。
※「怒りの日」=ここではモーツァルトの楽曲をイメージしています。
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作者名:リトルポム | 作成日時:2023年1月14日 22時