検索窓
今日:28 hit、昨日:13 hit、合計:24,433 hit

第46話 ページ13

.

「例えば道ばたに咲いた花をどうして美しいと感じるかを考える。空の青と海の青、その違い。木々の色の移ろいに疑問を持ったり、ボウルタウンの風車の動き、カラフシティの水の冷たさ」

一つ一つ、日常の何気ない、些細なことである。それでもだ。

「考えることで、まわりに存在するありとあらゆることがらをより鮮明に、より深く感じることができます」

自分の感覚と対話し、何をどう感じたかを自分自身が理解してあげること。

「それはきっと勉強に疲れたとき、仕事で大変な目にあったとき……あなたたちの背中をそっとひと押ししてくれるかもしれませんよ」

自分の世界には輝くピースがあちこちに落ちているのだという発見は、何にも代えがたいものである。

Aにはハッサク先生が伝えたいことが何となく理解できたが、1年生(特に子供たち)にはピンとこないようなので、

「……ちょっとむずかしい話なので、わからなくても大丈夫です」

とハッサク先生は付け加えた。

「とにかく美術とは!人生になくていいものですが、あったほうがより楽しいもの!みなさんの生活に少しでもいろどりをそえられたら喜ばしいです」

そこでちょうどチャイムが鳴った。まとめを言い切ったタイミングを合わせられるあたり、流石ベテランである。

しっかりと指導案をもとに授業の進め方を考えてからでないと、こうはいかないだろう。

「次からより実践的に美しさにふれていきましょう!おしまい!」








授業が終わり、美術室を出ていく生徒を見送ったあと、ハッサク先生が「どうでしたか」と尋ねてきた。

「なんというか……いろいろと新鮮でした。私も先生は違えど全く同じ授業を1年生の頃受けたはずなのに、視点が違うだけで全然違うものに感じて……」

「そうですか、それは良かったです。そのような気づきが、きっと成長をもたらしてくれるはずですよ」

「はい!」

「それでは今日の授業に関する小レポートは、次回の美術の授業の時に持ってきてください。授業計画表を渡してありますから、日程はそちらで確認を。確か来週だと思っていましたですよ」

「わかりました」

「では今回の授業見学はこれでおしまいですが、今日はこの後どうするのですか?」

第47話→←第45話



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (40 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
137人がお気に入り
設定タグ:ポケモンSV , チリ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:リトルポム | 作成日時:2023年1月14日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。