二人の“カタチ”【吉良ヒロト】

優しさは ページ15

ヒロトは部室でガムを食べてスマホを見てた。


『ヒロト、練習しよ…』


さっきのリュウジくんたちを見て、ヒロトがどれだけ悪く思われちゃってるのか知って、どうしてもヒロトを良いイメージに変えたかった。


「…」


チラッと見て、目線をスマホに戻した。



学校ではこんな風にしなきゃいけない？家ではあんなに優しいのに…。ヒロトは自分を偽ってるの…？


「ヒロト、お前がいれば永世はさらに強くなる。フットボールフロンティア優勝も、夢じゃないんだ」


「お前らだけで勝てるだろ。俺は興味ねーし」


『どうして練習しないの？昨日の練習は楽しかったのに。それに、ヒロトと一緒に出たいよ』


「俺に構うんじゃねえ…」


ヒロトは出ていった。


『待って…』


でもタツヤくんに止められた。


「やっぱりやめよう。ヒロトの気持ちは、ヒロトにしか分からない…」


『でも…私は行く！』


タツヤくんを振り払って、ヒロトのところに行った。





『ヒロト！』


「…A」


『やろう、練習！私は、ヒロトと一緒に出たいから！
ヒロトがフットボールフロンティアに出させてくれる、って言ったから！』


ヒロトがいることで私はサッカーを楽しめる。そんな気がしたから、無我夢中で言った。


「Aが思ってるほど俺は優しくねえんだ。練習は行かない」


『ヒロトは私のこと分かってくれたのに、そんな訳ない！ヒロトは優しいよ。
だから…』


「もういいだろ。俺は優しくなんかない。Aにだけ中途半端に優しいだけ。
練習しないことも、試合に出る気がないことも分かったな？お前ははやく練習に行け。
…俺なんかに構ってたって、お前が苦しいだけだ」


最後に言ったことは違和感があった。ヒロトらしさが消えてる感じで…。


結局何もできずに練習に戻るしかなかった。

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