焼け野原の街

先輩にもこんなことを言ってしまう馬鹿な人間。 ページ2

「帰省します」
　
「おぉ、ん？君の田舎って確か…」

「あ、いや、大丈夫ですよ。あそこは危険区域ではないし」


＊


今更思えば、何が“大丈夫ですよ”だったのだろうか。
最近、なんでも口だけのような気がする…
先輩にもこんなことを言ってしまう馬鹿な人間、そんなあだ名がつきそうだ。


ガタンゴトン、ガタンゴトンと僕を乗せて走る列車。
山に野原にたくさんの自然が見える車窓。僕の周りのがらんと空いた座席。
…気が付けば、乗客は僕だけになっていた。


僕はこの列車に乗って、ヴァーリニア州の実家に帰る。
会社の仕事も一段落ついて、やっと休暇が取れたからだ。
まぁそう言っても、ふとした思いつきなんだけど。
ストレス検査もひっかからず、先輩に遊ぶ約束をされず。
今日はラッキーだったかもしれない。このまま幸運続きでいたいな。




「次の駅は、クレフィス、クレフィスです。お降りの方は、キャントルのお忘れにご注意ください」




僕は、右腕にはめているキャントルと言う、腕時計型でタッチパネル式の個人情報端末を、はめてない反対の左手で触り、キャントルがあることを確認した。



このキャントルと言う機械は、この国シテミアで全国民がつけるのを最近、義務化された。
買い物の支払い、個人情報の管理は全てキャントルでやり、もちろん列車の乗車賃を払うのもキャントルがやる。




裏を返して言えば、キャントル一つ無くしたら生きていけない。




そんなことを考えていると列車はプシューと音を立て、僕の故郷クレフィスに止まっていた。
大丈夫ではない重い足取りで。

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