心配と不安 2 ページ33
テーブルの上には書きかけの楽譜が置きっぱなしになっていた。
散らばらないように気を付けながらテーブルを部屋の隅に寄せる。
『…………。』
片付けをしながら、つい視線が書きかけの楽譜にいってしまう。
新曲のその楽譜は2枚目の途中で音が止まっている。
そこからなかなか進まないのか、何度も書いて消した跡やいくつかのフレーズを書いては黒く塗り潰されている紙が何枚もある。
Re:valeの曲。
Re:valeの、千と百が歌う曲。
千さんが千さんであるための、兄ちゃんが兄ちゃんであるための、Re:valeがRe:valeであるための曲。
兄ちゃんは生活を、千さんを支えようと必死で頑張ってる。
私だけ、何もせずに守られたまま。
守られるだけなんて嫌だ。
何か、私にもできれば…。
―――――
『…大事な話って?』
3人でいつものように千さんの作ったご飯を食べ終わった後、兄ちゃんが話したいことがあるからと言って、再び3人で小さなテーブルを囲んだ。
真剣な表情をした千さんと兄ちゃんを見て、どんな話なのだろうと自然と身構えてしまう。
「…あはは、そんなに緊張しなくていいよ!大事な話だけど、悪い話じゃないから。」
兄ちゃんは私を見てそう言うと、ニコっと笑ってから視線を私の後ろに向けた。
つられて振り返ると、その先には積み重なった本とファイルに挟まれたプリント類。
…ちょっと借り過ぎたかな?早く返しに行かないと。
「…A、勉強好き?」
『…?うん、好き、かな?いろんなこと知るのは楽しいよ。』
今までにも何回かこの質問をされたことはある。
いつも「そっか!」と笑って終わる会話が、今日は違った。
柔らかな表情のまま、兄ちゃんが口を開く。
「…学校、行ってみたい?
Aの好きなことがたくさん学べる場所に。」
『…え?』
突然言われてどういう意味かを考えたけど、そのままの意味だとすぐに理解して納得する。
そういえば、私まだ年齢でいうと中学生だ。
普通、学校行くもんね。忘れてた。
学校、か…。
正直、イメージが湧かない。
小学校もほとんど行っていないし、勉強はほぼ全て家庭教師が付きっきりでさせられたし…。
それに……、
『…………。』
「難しいことは考えなくていいよ。Aが行きたいか、行きたくないかで考えて。」
「そうそう!オレたちのことは気にしないでいいから!」
そう言って笑いかける千さんと兄ちゃん。
私が遠慮しないようにそんなことを言ってくれているのは分かる。
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欅夏希 - とっても面白いです!感情の変化や状況などが分かりやすく、読みやすいなぁと個人的には思っています!お話を作るのは簡単ではないかもしれませんが、続きを読めるのを楽しみに待たせて頂きます。無理なさらず、頑張って下さい。 (2020年3月27日 22時) (レス) id: 94cd216a66 (このIDを非表示/違反報告)
柚木夏紗 - 面白いっ!!!!更新待ってます!!! (2020年3月18日 7時) (レス) id: 73f9f96d98 (このIDを非表示/違反報告)
聖(プロフ) - はじめまして いつも更新を楽しみにしています。 これからも頑張ってください^_^ (2020年3月14日 12時) (レス) id: d507af1541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:テル | 作成日時:2020年3月3日 13時