第捌拾肆話 ページ36
「宇髄さん!野一色さん!」
聞き覚えのある声が聞こえ、振り向く。
そこには走ってきたのか、息を切らしながら刀を握る天星さんの姿があった。
あぁ、ようやく来たんだ。
夢主ちゃんのお出ましですよ。
主役は遅れてくる?確かに、そうかもしれないね。
………それにしても、あんな事があったのに普通に話しかけてくるんだ。それにはちょっと驚いた。
「あれは……」
「上弦の陸です。二人で一つの鬼らしいですよ」
なんて、天星さんは既にご存知でしょうけど。
心の中で悪態をつく私は、やっぱり夢小説や乙女ゲームの悪役に向いてるんじゃないかと思ってしまった。不本意だけどね。
「お前、違うなぁ。
今まで殺した柱たちと違う」
妓夫太郎が宇髄さんを見据えながら口を開く。
そこに乗せられるのは、妬みと憎悪。
言葉だけでなく、表情からもそれがわかる。
「お前は生まれた時から特別な奴だったんだろうなぁ、選ばれた才能だなぁ。
妬ましいなぁ、一刻も早く死んでもらいてぇなぁ」
「……才能?」
宇髄さんは妓夫太郎の言葉を鼻で笑うと、すっと口角を上げて笑った。
顔には血が滲むが、その痛みなど気にならないとでも言うように笑って見せるのだ。
「俺に才能なんてもんがあるように見えるか?
俺程度でそう見えるなら、テメェの人生幸せだな。
何百年生きてようが、こんな所に閉じこもってりゃあ世間知らずのままでも仕方ねぇのか。
この国はな、広いんだぜ。凄ェ奴がウヨウヨしてる。得体の知れねぇ奴もいる、刀を握って二月で柱になるような奴もいる。
俺が選ばれてる?ふざけんじゃねぇ。
俺の手の平から今までどれだけの命が零れたと思ってんだ!」
……鬼殺隊とて、柱とて万能じゃない。
救えなかった命は…必ず存在する。
それは宇髄さんにだけでなく……きっと、この"野一色美華"にもあったのだろう。
人には、誰にでも限界があるのだから。
「才能があるってのは、こいつらみてぇに数多の呼吸を使いこなしたり、特別な能力を持ってる奴のことを言うんだ」
ドンっ、と背中を叩かれ目を見開く。
………それこそ、おめでたい考えですよ。
私に才能があったら、もっと強さがあったら……こんな世界でも、迷わず真っ直ぐ生きていけたはず。
私はちっぽけで…我が身が大事な自己中心的な人間だから。
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セレーナ・ラフィーネ(プロフ) - ネこ?ャんさん» ありがとうございます…!そう言っていただけると励みになります!更新はゆっくりかと思いますが、今後ともご愛読のほどよろしくお願いします! (2022年6月22日 18時) (レス) id: 50bf8bc3a8 (このIDを非表示/違反報告)
ネこ?ャん(プロフ) - 初コメ失礼しまぁぁあす!単刀直入に言いますと、今まで見た色んな人の作品より大っすきです…!!みんなとの関係が丁度いいというか…愛ちゃんからの攻撃も攻めすぎず攻めなさすぎず、ほんとに大好きです!ゆっくりでも更新頑張ってください!待ってます!!! (2022年6月21日 18時) (レス) id: c14429c9f6 (このIDを非表示/違反報告)
セレーナ・ラフィーネ(プロフ) - シャンさん» ありがとうございます!天星ちゃんとの関係や、他の男達との関係などなど……これからも怒涛の展開…になる予定なので、どうぞご愛読のほどよろしくお願いします! (2021年7月17日 18時) (レス) id: 50bf8bc3a8 (このIDを非表示/違反報告)
シャン - コメ失礼します!正直天星ちゃんといい感じになってるところとかそのまま男達にも好かれてるところとか性癖にぶっささりました!頑張ってください!!!めっっっちゃ好きです! (2021年7月16日 21時) (レス) id: 6939ec7c5a (このIDを非表示/違反報告)
セレーナ・ラフィーネ(プロフ) - suzuharuさん» ありがとうございます!そう言っていただけると励みになります……!更新はゆっくりかと思いますが、ご愛読のほどよろしくお願いします! (2021年7月1日 12時) (レス) id: 50bf8bc3a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セレーナ・ラフィーネ | 作成日時:2021年4月12日 19時