＃29 ページ33
髪を切ってから数日＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿。
リヴァイ兵長に「行け」と完了した書類を託され、エルヴィンの部屋を訪れていた。
今までは、嫌でも毎日顔を合わせていたはずなのに、ここ数日、仕事にかかりきりでエルヴィンに会うのは久しぶりだ。
「入るぞ、エルヴィン」
ドアを開けながらそういえば、エルヴィンもまた書類仕事に追われているようだった。
デスクまで近づき、机上の邪魔にならないところに持ってきた書類を置く。
「すまないな。少し立て込んで………その髪どうした?」
髪が短くなってからエルヴィンとは会っていなかったから、見せるのはこれが初めてだった。
長い髪の私しか知らない目の前の男は、目を大きく見開いた。
「……切った。いや、切られたの方が、正しいが、似合っているか?」
「あ、ああ。…似合っているが、切られたというのは?」
「リヴァイ兵長に、生まれ変われ。と言われて、それで」
「リヴァイが……そうか。それは効果をなしているか?」
「それは私の心がけ次第だ。
……だが、最近、随分久しぶりに笑った。効果はあるらしい」
「ほう。私ですら、お前の笑った顔をほとんど見たことがない。
どうやら、リヴァイに任せて正解だったようだな
……だが、せっかく長かったのに。勿体ないな」
「勿体ないなら、その頭の上のヅラに足すのを手伝ってやろうか」
この前、本部を歩いているとき、エルヴィン団長は、ヅラだと言っていた団員がいたの思い出し、冗談でそう聞いてみると、エルヴィンが口を開けてフリーズしていた。
＿＿＿＿＿＿＿＿なんだか、まずいことを聞いたようだ。
「………ジゼル。その話はどこから?」
「あ、いや、……こ、この前本部を歩いていたら誰かが言っているのが聞こえただけだ」
「そうか………ジゼル」
「……はい」
「私の髪は………地毛だ。……わかったかい?」
「わ、わかった」
エルヴィンのこんなに怖い笑顔を見るのは、夜中にコイツの家から脱走して、心配をかけたとき以来だ。
もう、この話題はよそう………。
この後、償いのために、エルヴィンの机上で山をなす書類の整理と資料集めを少しばかり手伝った。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿845年編・完＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
その後、リヴァイ兵長の部屋にて…
「おい、クソガキ、書類提出に何時間かけていやがる」
「すみません。……少し、トラブルがありまして」
「トラブル?」
「いえ、なんでもありません」
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作者名：clear | 作成日時：2017年5月5日 21時
