＃27 ページ31
ノックをしてすぐに入ってきたのは、俺がすぐ来るように、呼び出していたからだろう。
ジゼルを俺が座るデスクのそばまで寄せると、俺は口を開いた。
「おい、クソガキ」
「……なんでしょうか」
「その長い髪、邪魔だ」
「……引っ張るには便利な代物のように感じますが…。
わかりました。明日にでも切ってき」
「今だ。今すぐにここで切る」
「は?」
ジゼルが目を見開く。
「俺が切ってやる。今までの自分を否定しろ。生まれ変われ」
椅子から立ち上がり、引き出しからナイフを取り出す。
それを持って、ジゼルの後ろに回り込み、もう引くのも最後であろう長い三つ編みの銀髪を引っ張った。
「……まさか、兵長そのナイフで…」
「察しがいいな。その結び目から斬り落としてやる」
ナイフを編み始めに宛がい、一気に
＿＿＿＿＿＿ブツリ
切り落とす。
さっきまでつながっていた長い髪は床に落ち、太陽の光を反射した。
「……あの、心の準備くらい確認してから切り落としてください」
「先に言え、もう遅い」
ジゼルは床に落ちた自分の長い髪を眺めると、感慨深げに目を細めた。
すっかり短くなった後ろ髪を触りながら、ジゼルは顔を上げた。
「ですね。でも、なんだか、スッキリしました。ありがとうございます」
「まだ終わってない。後ろ、整えてやる。
ぼさっと突っ立てるな。座れ、切れねぇだろうが」
椅子を出してそこにジゼルを座らせると、はさみを取り出してきて、縦にはさみを入れ始める。
中途半端な長さにするよりは思い切って短くしてやろうと思い、切り終わったころにはベリーショートになっていた。
前髪部分はノータッチのため、顔横に垂れている長い髪もノータッチだ。
「……悪くねぇ」
「そう…ですか?それならいいのですが。
……ええ、ありがとうございました。随分頭が軽くなって少し感覚がおかしいですが。
では、ここを片づけますね、すぐ終わらせます」
「待て。少し、聞け」
「……はい?」
「そう簡単に生まれ変われはしないだろう。
だが、俺の部下になった以上、死ぬつもりで壁外に行くことを俺は許さない。
命令だ、何があっても生きて戻れ、そして、今までの何もできないと思い込む自分を捨てろ、ジゼル。いいな」
「…貴方は、難しいことを言う。ですが、最善を尽くします。
………私からも、いいでしょうか、兵長」
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作者名：clear | 作成日時：2017年5月5日 21時
