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#10 ページ14

結局、服を返すという目的以外は果たせずに終わった。
いや、実際には、果たさなければならないことはきちんと果たせたのだ。自分の思う形での結果にならなかっただけのことで、残るは私怨のみだったのだから、これで良かったのだ。

本当は、あそこで返した服をはさみでビリビリに引き裂いてやるつもりだった。そして、私を助けたことを思う存分責め立ててやるつもりだった…。それができなかったのは、リヴァイにはすべてお見通しだったからだ。
あの、何とも言えないあの男の目を見たとき、今までの事が嘘のように私の中に渦巻いていた激情までもがスッと凪いだ。

きっと、あの人は、私の事を改めて、ますますクソガキだと思ったことだろう。


「______それでいい。」


私はいつまで経っても、人に迷惑をかけて、我が儘を言い、他人を不幸にする疫病神なのだから。

服を返したことで、私がここでやり残していたことは全部終わった。
もう私の手元には何もない。

これで、生きている理由はなくなった。


「________一思いに死ね。私」


そうすれば、もう私のせいで不幸になる他人はいなくなる。
いや、そんな綺麗な理由で死にたいんじゃない。
もう、私が見たくないのだ、私に関わった人が不幸になっていく姿を……。

幸い、もうすぐ壁外調査だ。私を食ってくれる巨人どもが壁の外で待っている。
死ぬ覚悟なんて必要ない。あそこは、そんな覚悟などなくても確実に私を殺してくれる。

しかし、エルヴィンには返しても返しきれない大恩がある。
だが、この際仕方ない。私という厄介者が、疫病神がいなくなることが迫手もの恩返しになればいい。


「ありがとうございました。……やり残したことは、もう、ない」


直接言うことはしない。くだらない私怨でも私には大切なことだから。
大切な人に会わせてくれたことの感謝くらいは直接しておくべきだっただろうか?


「……いや、これでいい」


音の無い空間に響く私の声は、予想以上に私の胸に大きな穴を開ける。
だが、せめて、あなたには聞こえているといい。

リングをつまんで私の目線に持ち上げ、口付けた。
貴方と一緒の場所にはいけないんだろう。




後ろからうすぼんやりと光が差し込む。
目を細めて、窓の外を見れば空が白み始めていた。


______________________夜明けだ。

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ああ - 名前が反映されません (2023年4月4日 3時) (レス) id: 8d7dc1031f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:clear | 作成日時:2017年5月5日 21時

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