＃18 ページ22
「…ありがとうございます」
ジゼルをベッドに寝かせて、傍に置いてある椅子に座りなおすと、なぜか礼を言われた。
「俺のせいだ。気にするな
クソガキ……聞きたいことがある」
「私で、答えられることでしたら…」
俺がずっと聞きたかったこと、それは、今現在も俺の胸ポケットにしまっているリングの事だ。
リングの事は、知らなかったが、俺はコイツを助けたときに、多分、このリングの持ち主を見ているからだ。
コイツの返答の仕方次第で、俺はコイツにこのリングを返すか否かが決まる。
「前まで、お前がつけていたリング、あれはどうした。
……大事なものだったんだろう。誰のものなのか、聞いてみたかった」
「どんな無理難題を聞かれるかと思えばそんなことですか。
……壁外で落としてしまったようです。
あれは、あなたに助けてもらった後、出会った人にもらったもので…私の…こんな命より大事なもの…です」
胸元にそっと手を置き、寂しそうに指先をこすった。
「お前は…リングがあれば、壁外で死ぬのか
……それとも、諦めて死ぬのか」
「……質問の意図が分りかねますが…。
…リングがあれば、安心して死ねるのは確かでしょうね。
無くても……死ねますが……怖いですね。1人彷徨うことになりそうで」
「無いと死ぬのが怖いなら、無いほうが今のお前にとっては良いのか」
胸ポケットに入れたリングを返すのは、しばらく先の話になりそうだ。
「死ぬことを許してもらえないのならそうかもしれません。
…もう探しても見つからないでしょうし。
………それに、私は、立体起動を認めてもらえたことがうれしかった。
もう少し、生きていてもいいのか、と思いました。
……それは事実です」
俺はそこで気が付いた。コイツが死にたいのは、認めるやつがいないからだ。
認めていくれた者がいなくなり、1人なって、エルヴィンに引き取られてしばらくたった今でもコイツは1人なのだ。
コイツの過去は知らないが、何か、認めてもらえないとコイツは生きていたくない理由があるのだ。
否、生きていられないのだろう。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿本当にガキだな。
俺にできるか。エルヴィンが俺を引き上げたように、コイツを引き上げることができるか。
＿＿＿＿＿＿＿＿面倒くせぇなぁ。
だが、俺は今さっき、このガキに慰められた。
憎いのはずの俺を責めることもせず、真剣に、まっすぐに…。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿仕方ねぇ……か
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作者名：clear | 作成日時：2017年5月5日 21時
