154話 ご無沙汰スイーツ会 ページ18
「結局、付き合うことになったって?」
まるで、さも会話の続きのように、裕太は烏龍茶をストローで吸いながら告げた。
裕「おい、A?」
裕太が私の目の前で手を振る。
私は何度か瞬きを繰り返して、ようやく思考が裕太に追いついた。
貴「不二先輩のこと?」
裕「それ以外に何があんだよ」
小首を傾げる裕太に、私は「主語がないのよ」と反論した。
裕太は少し不服そうに唇を尖らせたが、「実際そうなんだろ」と、確信めいた口調で続ける。
裕「まあ、そうなるかなとは思ってたけど」
貴「え、マジで?」
裕太の言葉に、食べかけのいちごタルトのいちごをひとつ、ぽとりとテーブルに落とす。フォークでさし直して裕太を見ると、なぜか彼の方が驚いていた。
貴「なに」
裕「なんでお前がびっくりしてんだよ」
貴「いやだって、……何があって?」
裕「何って、普通に……兄貴と話しててそうなのかなって」
貴「お前ら兄弟でどんな話してんだよ」
裕「べ、別に変な話してねえよ!」
大した意味を含めたつもりは無かったのだが、裕太が盛大に勘違いをして顔を赤らめ反応する。
相変わらずの赤面の困り顔に、思わず悪戯心が疼き、私は口元を緩ませてわざとらしく指をさした。
貴「えっち〜」
裕「ち、ちが、してな……!」
可愛い顔をしていたので、何度か抵抗されながら写真や動画を撮る。後で不二先輩に送ってあげよう。きっと羨ましがられるだろう。
裕太をしばらくからかっていると、咳払いをして、「そうじゃなくて」と自ら仕切り直した。
裕「大概がテニスの話だけど、合間にする共通のお前の話が、だいたい兄貴発信だし」
頬の熱を手のひらからの風で逃がしながら、裕太が少し拗ねたように言うので、今度は私が首を捻った。
貴「何が変なんだよ。私と話す時も合間にする共通のお前の話は不二先輩発信だぞ」
私の言葉に、裕太が長い溜息をつく。そして目を瞑ったまま、呆れ返った口調でひとこと。
裕「……もういいや」
貴「誠に遺憾です」
据わった目で私を見つめる裕太。声を大にして言い返したいが、生憎ここは店の中。しかもファミレスではなく小洒落たケーキ屋だ。
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作者名:葉奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/
作成日時:2022年8月26日 17時